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ワイヤレス送電第二幕、「共鳴型」が本命かワイヤレス給電技術 共鳴方式(7/9 ページ)

電源ケーブルを使わずに電力を送る「ワイヤレス送電技術」に大きな技術進展があった。数mの距離を高効率で電力伝送できる可能性を秘めた「共鳴(Resonance)方式」の登場だ。

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課題多く実用化は先か

 実用化までに乗り越えるべき課題がほかにもある。例えば、10MHzの周波数を使った場合、受電用コイルを携帯電話機に組み込める大きさに小型化しつつ、十分なインダクタンスとキャパシタンスを得るのが比較的難しいことや、送電側で高周波電力を生成するための電源回路部と受電側で高周波電力を直流に変換する整流回路の効率が低いという課題がある。

 このほか、Qが高いということは、コイルのインダクタンスやキャパシタンスのばらつきが、Qの大きな変化に直結することを意味する。従って、実際に製造する際に、製造ばらつきや経年変化を抑えて、Qが高い状態をきちんと維持可能かという点に気を配る必要がありそうだ。

 以上のように複数の課題があるため、実用化まではしばらく時間がかかりそうだというのが、業界の共通認識である。ただ、米WiTricity社や米Qualcomm社は、共鳴方式に対応したワイヤレス充電機能を搭載した試作品の開発を進めており、実用化時期についても言及している。「2009年後半には機器の評価段階に入り、2010年後半には最終製品が市場に登場する見通しだ」(WiTricity社のPresident兼CEOを務めるEric Giler氏)と語ったほか、Qualcomm社の日本法人の担当者は、「2011年後半から2012年ころに最終製品が市場に登場するのではないか」と説明した。

まず、携帯電話と電気自動車を狙う、CEOが語るWiTricity社の戦略

 米WiTricity社は、共鳴現象を利用してワイヤレス送電が可能であることを実証した、米MITの教授のMarin Soljacic氏らが設立したベンチャー企業である。MITから技術ライセンスを受け、2007年に設立した。同社のPresident兼CEOを務めるEric Giler氏に、同社が考える共鳴方式の特徴や現在の開発状況を聞いた。

図
米WiTricity社President兼CEOのEric Giler氏

EE Times Japan(EETJ) 共鳴方式の特徴は何か。

Giler氏 「安全(Safe)、高効率(Efficient)、長距離伝送(Over distance)」の3つが特長だ。しかも、とても「スケーラブル」で使い勝手が高い。ここで言うスケーラブルには、2つの意味がある。

 1つは伝送距離についてである。伝送距離は、数cmから数mと幅広く設定可能だ。伝送距離の上限は、実際の最終製品の大きさに依存する。現在のところ、屋外の広い範囲というよりは、部屋の中といったようにある限られた範囲での利用を想定している。

 もう1つは、送電電力である。送電可能な電力は、数mWから数kWと幅広い。以上のことから、幅広い用途に適用できることが分かるだろう。この2つのポイントは、ほかの技術にはない大きな利点である。

EETJ 具体的に、どのような用途を想定しているか。

Giler氏 民生分野では、携帯電話機やデジタル・カメラ、ノート・パソコンといった携帯型機器をはじめ、テレビやホームシアター、デジタル・フォト・フレームといった据え置き型機器も想定している。内蔵2次電池を使わずに、ワイヤレス供給した電力だけで稼働させることも可能だ。

 さまざまな産業機器やロボットも対象とする分野である。産業分野では、電源ケーブルの破損や、移動しながら使う機器の電力供給方法が問題になることがある。ワイヤレス送電技術を適用すれば、このような課題を解決可能である。しかも、高価な内蔵2次電池の容量を減らせる可能性がある。ほかにも、電気自動車やスマート・カード、体内で使う医療機器も対象となる。

 当社が重要視している用途は、携帯電話機と電気自動車である。現在、当社の技術を使ってアイディアを形にしたさまざまな「Proof of Concept(機能検証機)」を開発している段階である。2009年後半からは、さまざまな企業が実際の機器に当社のワイヤレス送電機能を組み込んで、フィールド・テストを実施する段階に入ると考えている。

 2009年1月に開催された米国最大の家電ショー「2009 International CES」では、当社のブースに来た85%の企業が日本の企業だった。日本市場は、当社にとって非常に重要である。協力して製品開発を進めていきたいと考えている。

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