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第9回 エミッタ接地回路のサプリメント 〜 エミッタ・フォロア 〜Analog ABC(アナログ技術基礎講座)(2/3 ページ)

前回までは、エミッタ接地増幅回路を説明してきました。今回はエミッタ接地回路の特性をさらに向上させるサプリメントのような「エミッタ・フォロア(コレクタ接地)回路」を紹介します。

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低入力インピーダンスが原因

 図1(a)に示した増幅回路のどこに80Ω程度の入力インピーダンスがあるのでしょうか。ベースのバイアス抵抗(R1とR2の並列合成抵抗)は500Ωです。一見すると、80Ωの抵抗は回路図には見当たりません。実は、ベースのバイアス抵抗とベース自身の入力インピーダンスによって、80Ωの入力インピーダンスが形成されているのです。

 トランジスタのエミッタには小さい抵抗(Rvt)があり*1)、26mAの電流を流した時には約1Ωになることを、これまでに何度か説明したことを思い出してください。ベースから見るとこの抵抗(すなわち、ベースの入力インピーダンス)は、電流増幅率β倍になります。エミッタ電流のおよそ1/βがベース電流ですから、抵抗としてはβ倍になるわけです。ここではβが100倍のトランジスタを使用していますので、ベースの入力インピーダンスは100Ωとなります。

*1) RVtはエミッタ電流によって変化する抵抗(すなわち1/gm)で、2009年4月号の本欄で説明しました。

 エミッタ側にある20Ωの抵抗は、これと並列に挿入したコンデンサのインピーダンスがこの増幅回路を利用する周波数帯域では低くなっているので、影響を与えません。従って、2段目の入力インピーダンスは、ベースのバイアス抵抗500Ωとベース自身の入力インピーダンス100Ωの並列回路として考えることができるので、これらの合成抵抗を計算すると確かに80Ωとほぼ同じ83.33Ωとなります。

 ここで、なぜベースのバイアス抵抗とベース自身の入力インピーダンスが並列なのか、と疑問に思うかもしれません。それは、扱う信号が交流の場合、電源(Vcc)側もグラウンド側も同じだと考えられるからです。R1は入力端子と電源端子の間に入っていますが、入力端子とグラウンドの間に入っているとも考えられるのです。つまり、電源端子に接続されているR1と、グラウンドに接続されているR2、エミッタとコンデンサを経由してグラウンドにつながっているベースの入力インピーダンスという3つすべてが並列に接続されています。

 以上の83.33Ωを基に再度、減衰量を計算すると、シミュレーションで求めた−7dBとほぼ同じ−6.85dB(0.454倍)となります。せっかく増幅してもその半分が失われることになります。

 そこで、エミッタ・フォロアを追加して、この点を改善した例を、図3に示しました。図3(b)を見ると、1段目の出力信号が40dB近い利得で増幅され、増幅回路全体の利得も80dB近い値となっていることが分かります。

図3
図3 エミッタ・フォロアを1段目と2段目の間に挿入 (a)はエミッタ・フォロアを活用した増幅回路です。シミュレーション結果(b)を見ると、図2(b)に比べて明らかに利得が向上しています。本来の電圧利得である80dBが得られています(青線)。

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