さまざまな機器に無線機能を後付けで搭載、Wi-Fi対応メモリーが秘める可能性:無線通信技術 Wi-Fi(1/2 ページ)
東芝とシンガポールのTrek 2000 International社は2010年6月22日、「無線LAN内蔵フラッシュメモリーカード共同規格策定フォーラム」を設立することを発表した。
東芝とシンガポールのTrek 2000 International社は2010年6月22日、「無線LAN内蔵フラッシュメモリーカード共同規格策定フォーラム」を設立することを発表し、6月29日に設立発表会を開催した(図1、図2)。設立発表会では、現在開発を進めている無線LAN内蔵SDメモリカードを公開し、想定用途を説明した。このほか、現在策定を進めている共同規格の概要や、今後の製品展開の一端を明らかにした。
機器間で直接データをやりとり
無線LAN内蔵SDメモリカードとは、フラッシュメモリをはじめ、メモリ制御機能やマイコン、無線LAN通信用RFトランシーバ機能を1つにまとめたもの。これを使えば、機器(例えば、デジタルカメラ)の側を変えることなく、無線機能を付加できるようになる(図3)。
図1 Trek 2000 International社が国内で発売予定の無線LAN機能搭載のSDカード「FluCard」 無線LAN内蔵フラッシュメモリーカード共同規格策定フォーラムでは、現在のFluCardの仕様をベースにして、「利用者の使い勝手をより高めるように」(同フォーラム)、機器制御やユーザーインターフェイスを改良する。
「無線通信機能を搭載した機器側を製品化するには、各国の無線関連の認証を機器ごとに取得する必要がある。これが、大きな手間になっていたようだ」(東芝のメモリ事業部フラッシュメモリ事業戦略部の部長である中井弘人氏)。無線関連の認証をSDメモリカードが取得するため、デジタルカメラなどの機器として認証を取得する作業は不要になると説明した*1)。
図2 2010年6月29日に「無線LAN内蔵フラッシュメモリーカード共同規格策定フォーラム」の設立発表会を開催 写真左から、Trek 2000 International社のCEOであるHenry Tan氏、シンガポール公使のLaurence Bay氏、東芝のメモリ事業部フラッシュメモリ事業戦略部の部長である中井弘人氏。
東芝とTrek 2000 International社が想定する主な利用シーンは、PCを介さずに機器間で直接データをやりとりする用途である(図4)*2)。データを移動するときの利用者の操作としては、カメラのメニュー画面を操作して、送信(または受信)設定のボタンを押すだけである。データを送信(または受信)中でも、写真は撮影できる。
東芝の説明によれば、「市場調査の結果、デジタルカメラで写真を撮った後、その場でデータを交換したいという要望が特に強かった」という。現在は、さまざまな場面で撮影した写真を共有するには、デジタルカメラからPCにデータを移動した後、CD-RやDVDといった記録媒体に記録して渡したり、インターネット上の画像共有サービスにアップロードするといった手間が掛かっている。このような作業は不要になるというわけだ。
このほかの用途としては、インターネット上のサーバなどへのデータのアップロードや、サーバからのダウンロードなどがある(図5)。
東芝とTrek 2000 International社は、フォーラムの取り組みの第1弾として、共同規格に準拠した無線LAN機能搭載のSDメモリーカードを2010年秋ころに製品化する。「無線LAN機能を搭載したことによる販売価格の増加は25%〜30%に抑えたい」(Trek 2000 International社のCEOであるHenry Tan氏)。Trek 2000 International社の日本オフィスの責任者である菅原良一氏は、「SDカードの役割は、データの記録だけではない。無線機能とメモリの組み合わせが、これからの大きな流れになるだろう」と意気込みを語った
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