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さまざまな機器に無線機能を後付けで搭載、Wi-Fi対応メモリーが秘める可能性無線通信技術 Wi-Fi(2/2 ページ)

東芝とシンガポールのTrek 2000 International社は2010年6月22日、「無線LAN内蔵フラッシュメモリーカード共同規格策定フォーラム」を設立することを発表した。

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機器制御やユーザーインターフェイスの仕様策定を進める

 同フォーラムでは現在、機器制御やユーザーインターフェイスに関する共同規格の策定を進めている。「特にカメラメーカーと技術的な議論を進め、無線LAN機能搭載のSDメモリーカードの仕様を決める。2〜3カ月後には内容が固まる見込みだ」(東芝の中井氏)。

 共同規格のベースは、Trek 2000 International社の既存の無線LAN機能搭載SDメモリーカードである。これを基に、幾つかの変更を加える。例えば、現段階では、カメラのメニュー画面において、写真消去の項目を選択をしたときの制御信号を、実際に写真は消去されないものの、写真送信のトリガーにしている。トリガー信号を発生させる仕組みを、利用者の使い勝手も考慮しながら新たに規定する。

 また、現在のTrek 2000 International社の仕様では、撮影した写真を送信または受信するには、いったん一旦カメラの電源をオフにする必要がある。電源をオフせずに、写真を送信/受信するには、カメラ側の設計変更が必要となる。「将来的には、この点もカメラメーカに対応してもらいたい」(同氏)と説明した。Trek 2000 International社では、無線LAN機能搭載のSDメモリーカードに「FluCard」という名称を使っているが、この名称も含めてフォーラム内で検討を進める。

 共同規格を策定後、製品化済みのカメラに無線LAN機能搭載のSDメモリーカードを取り付けて、正しく動作するか確認する作業を進める。その後の展開としては、機器メーカーにこだわらずさまざまな企業の参加を募ることで、新たなサービスの開拓を目指す。例えば、さまざまなアプリケーションをインターネットを介してカメラにダウンロードしてもらうようなサービスや、利用者が撮影した写真を共有するサービスが考えられる。また、カメラに広告を配信するようなサービスも実現できると説明した。

 現在の参加企業は2社だけだが、「フォーラムに参画する意思を示している企業が5社〜6社ある。契約に向けた法務作業を進めている段階だ」(同氏)という。

振ってデータを送る試作機も

 サービスの展開だけではなく、無線LAN機能搭載SDメモリーカードそのものの高機能化も進める。例えば、位置情報を取得するジオタギング機能を搭載することを予定している。また会場では、カメラを振って写真を無線送信するデモを披露していた。SDメモリーカードにセンサーを搭載することで実現している。

 無線通信機能に関しては、現在、無線LAN通信規格のうち「IEEE 802.11b/g」に対応しているが、2011年には最新版である「IEEE 802.11n」に対応させる予定である。しかし、IEEE 802.11nを採用した場合でも、筐体などの悪影響で実効速度は数Mビット/秒程度になる見込みで、記録容量の大きい動画像を短時間に伝送するのは難しい。IEEE 802.11nに続く、さらに高速の無線通信技術の採用については、「フォーラムとしての候補は、現時点では未定」(東芝の中井氏)とした。

 ただ、将来の高速の無線通信技術の候補の1つには、「TransferJet」がありそうだ。現在、TransferJetコンソーシアムがTransferJet技術の普及に向けた取り組みを進めている。同コンソーシアムには、「日本国内のデジタルカメラメーカーのうち、9割の企業が加入している」(TransferJetコンソーシアム担当者)という状況である。東芝も、TransferJetコンソーシアムに参加しており、CEATEC 2009では、TransferJet技術を使ってPCと携帯電話機間の高速データ伝送を見せていた。

先行するEye-Fi社製品とはコンセプトが異なる

 なお、無線LAN機能を搭載したSDメモリーカードは、すでに米Eye-Fi社が製品化している。Eye-Fi社のSDメモリーカードと、東芝/Trek 2000 International社のSDメモリーカードは、製品の性格が異なるようだ。

 具体的には、Eye-Fi社のSDメモリーカードは無線LANのアクセスポイント(AP)を介して、インターネット上のサーバまたは、ホームサーバにデータを送ることを用途の主眼に置いている*3)。これに対して、東芝/Trek 2000 International社のSDメモリーカードは、機器間のデータのやりとりを用途の主眼に置いている。機器間のデータ伝送だけではなく、サーバへのデータのアップロード、ダウンロードを利用者が主体的に選択する仕組みになっている。

*3. 米Eye-Fi社は、PCとデジタルカメラ間でデータを直接やりとり可能なアドホック接続機能を搭載した無線LAN内蔵SDメモリーカードを2010年5月に製品化している。

 同フォーラムの設立発表会で、立場が異なる複数の関係者に聞いたところ、上記の答えが同様に返ってきた。なお、Eye-Fi社の日本法人であるアイファイの広報窓口に、東芝/Trek 2000 International社の製品とEye-Fi社の製品の違いを質問したところ、「現時点でコメントできることはありません」とのことだった。

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