第18回 差動対がオペアンプに変身(3)〜入出力範囲をエミッタ接地で広げる〜:Analog ABC(アナログ技術基礎講座)(1/2 ページ)
本連載では、第16回以降、差動対の基本的な回路から出発し、さまざまな付加回路を使ってオペアンプに近づける方法を紹介しています。今回は、増幅回路をオペアンプとして使うための条件の2つ目「入出力動作範囲が広いこと」に注目します。
本連載では、第16回以降、差動対の基本的な回路から出発し、さまざまな付加回路を使ってオペアンプに近づける方法を紹介しています。オペアンプとして使うには、(1)利得が高いこと、(2)入出力動作範囲が広いこと、(3)オープン特性が1次傾斜であることの3つが必要です。本連載の第16回と第17回では、能動負荷を使った差動対の直流解析と交流解析の結果を紹介し、能動負荷を使うことで利得が大幅に高められることを示しました。
出力電圧が低い領域で動作しない
今回は、増幅回路をオペアンプとして使うための条件の2つ目「入出力動作範囲が広いこと」に注目します。図1は、前回までに設計してきた増幅回路(本連載第16回の図1を参照して下さい)で入力電圧VS1をグラウンド電圧から電源電圧まで変えたときの出力電圧Voutの変化です。
図1 能動負荷を使った差動対の入出力特性 これまで設計してきた増幅回路(本連載の第16回の図1)の入出力特性です。理想的には、出力電圧はグラウンド電圧(0V)〜電源電圧(5V)の範囲で動作してほしいのですが、そうなっていません。出力電圧が1.2V付近までしか下がっていません。
理想的には、VS1とVS2の差がマイナスの範囲(0V〜3V以下の入力範囲)で、GND(0V)にほぼ近い出力となり、VS1とVS2の差がプラスになると電源電圧(5V)を出力するという曲線になってほしいのですが、それとは大きくかけ離れていることが分かります。すなわち、出力電圧(図1の赤線)の上限は、電源電圧すれすれまで上昇していますが、これに対して下限は1.2V付近までしか下がっていません。
また、出力電圧の変化が2.2V付近(入力電圧は3.0V付近)で鈍くなってしまっています。能動負荷を使えば、前回紹介したように利得は非常に高くなります。従って、わずかな入力変化に対して出力は大きく変化するはずです。出力電圧が2.2V以下の範囲(入力電圧は3.0V以下)で変化の具合が鈍くなっているのは、利得が急速に低下していることが原因です。
オペアンプは帰還をかけて使うことが前提なので、利得が高くないと設計通りの性能を得られなくなります。つまり、図1からは、オペアンプとして使えるのは、出力電圧が2.2V〜5.0Vの範囲に制限されてしまうことが分かります。
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