連載
番外編 電源フィルタの設計に悪戦苦闘、雑音を抑えるはずが発振状態に…(前編):Analog ABC(アナログ技術基礎講座)(3/4 ページ)
振器を設計するとなかなか発振してくれないのに、アンプはすぐに発振してしまう…。高利得/広帯域のアンプを発振しないように設計するのは、結構難しいものです。
電源フィルタが並列共振器に……
図2(a)を見た限りでは、電源フィルタはインダクタL1とコンデンサC1が直列に接続された回路です。並列になっている部分はどこにも見当たりません。
実は、アンプが抵抗成分になり、コンデンサに対して並列に入っています。アンプを抵抗として置き換えた等価回路を、図3(a)に示しました。アンプの消費電流は1段当たり6mAに設定しました。合計3段のアンプがありますので、全体の消費電流は6mA×3段=18mAです。これが電源電圧5Vで消費されているわけですから、等価抵抗は以下のようになります。
5V/18mA=278Ω
今回はエミッタ接地のアンプを使いましたので、消費電流は入力信号に依存します。この消費電流の変化は、図3(a)の電流源I1で置き換えています。図3(a)を見て下さい。アンプから電源側を見ると、まずC1があり、その先にL1があります。L1の先には電圧源V1がありますが、電圧源のインピーダンスはゼロですので、電流が変化したとしてもL1の先(つまり、Vcc)の電圧は動きません。
図3 電源フィルタが並列共振器を構成 図2の下図のようにアンプが発振したのは、電源フィルタが並列共振器を構成してしまったからです。上図(a)は、図2上図の等価回路です。アンプを電流源と等価抵抗で置き換えました。下図(b)は、並列共振の鋭さ(Q値)を下げるために、ダンピング抵抗を入れた等価回路です。
従って、5Vの電圧は印加しているのですが、交流信号にとってはグラウンド(GND)に接続されているのと同じ状態になっています。つまり、L1とC1が並列に接続されていることになります。 並列共振が発生してしまうと、アンプの電源電圧VCC2が、アンプ自身の電流でゆすられてしまうことになります。これは、非常にまずいことです。
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