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「GaNの耐電力が10倍に」、降伏電圧を大幅に高める技術を米大が開発パワー半導体 GaNデバイス

 次世代パワー半導体の材料として期待されているGaN(窒化ガリウム)。ただしNorth Carolina State Universityの研究チームによると、250V付近を超えるとブレークダウン(降伏)現象が発生してしまうという課題があったという。同研究チームは、この現象が発生する電圧を1650Vまで高める技術を開発したと発表した。GaN半導体が扱える電力を10倍に高められるという。

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 次世代パワー半導体の材料として期待されているGaN(窒化ガリウム)。ただしNorth Carolina State Universityの研究チームによると、250V付近を超えるとブレークダウン(降伏)現象が発生してしまうという課題があったという。同研究チームは、この現象が発生する電圧を1650Vまで高める技術を開発したと発表した。GaN半導体が扱える電力を10倍に高められるという。

 そのような大電力を扱えるGaN素子が実現されれば、今後、スマートグリッドから電気自動車に至るまで、さまざまな新興分野に応用できると期待できる。

 今回の研究は、同大学の教授であるJay Baliga氏と、博士課程の学生であるMerve Ozbek氏が共同で実施した。Baliga教授によれば、末端電極に中性種(今回はAr(アルゴン)を用いた)を注入すると電界が拡散され、低電圧でのブレークダウンを防ぐことができるという(図1)。なお、同教授はGeneral Electric(GE)に勤務していた1970年代にIGBTの発明に関わった人物の1人である。

 Ozbek氏は次のように解説する。「高電圧を扱う大電力素子が抱える大きな問題の1つは、端部において低い電圧でブレークダウンが発生してしまうことだ。今回の成果で、GaN素子に向けた平面型の末端処理の新たな手法を実証できた。GaN素子の端部にAr原子をイオン注入し、薄いアモルファス層を形成するという手法である。これによって、理想に近い平面平行降伏電圧を実現できた。イオン注入により、ダイオード構造の端部上側の表面に、高い抵抗性を持つ薄膜状の領域が形成される。その結果、表面に沿って電位が拡散され、電界の強度が低減される仕組みだ」。

 同研究チームは、次のようにしてこの手法を検証した。すなわち、ショットキーダイオード素子を製造し、ブレークダウン電圧を通常の約7倍の1650Vまで引き上げた。その結果、素子の電気抵抗は1/100まで減少し、耐電力が10倍に増大したという。

図1
図1 GaN材料のブレークダウン電圧を大幅に高める GaN素子の末端電極にイオン注入を施すことで(図中の緑色の領域)、GaN素子のブレークダウン電圧を300Vから1650Vに引き上げることに成功したという。

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