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第26回 MOSFETで増幅器を設計(2)Analog ABC(アナログ技術基礎講座)(2/2 ページ)

本連載では、第24回以降バイポーラトランジスタからMOSFETに話題を移し、アナログ回路設計の基本を紹介してきました。今回は、前回に引き続き、MOSFETを使った増幅器の設計方法を解説しましょう。

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大振幅でも応答は速いMOSFET

 次に、過渡解析を実施します。復習になりますが、過渡解析とは、回路に加えた信号源の波形を、時間とともに変化させたときの、各部の電圧と電流を調べるものです。交流解析では、実際の波形の具合(ひずみや形など)を把握することはできません。これに対して過渡解析では、交流解析では分からなかったような、実際に発生している現象を確認することができます。

 過渡解析に限ったことではありませんが、信号源インピーダンスを考慮することを覚えておく必要があります。実際の回路の信号源インピーダンスは、シミュレーションのように「0Ω」とか「∞」ではありません。今回の増幅器では、500Ωに設定しました。信号源インピーダンスを考慮しないと、シミュレーションでは良い特性が得られたとしても、実際の回路では周波数帯域が変化したり、動作点が変わったりしてしまいます。

図3
図3  MOSFETを使った増幅器の過渡解析の結果 出力信号は入力信号と連動して大きくなり、最終的にはほぼ電源電圧と同じ程度の出力になります。振幅が大きくなるほど出力信号の波形はひずみますが、バイポーラトランジスタのように、大振幅で急速に応答速度が遅くなることはありません。

 今回の過渡解析では、入力信号には周波数が100MHzの正弦波を使いました。入力信号の振幅を、0.1Vpp、0.2Vpp、0.4Vpp、0.6Vpp、0.8Vpp、1.0Vppと増やしたときの出力信号の振幅を確認しましょう。

 図3を見ると、出力信号は入力信号と連動して大きくなり、最終的にはほぼ電源電圧と同じ程度の出力になることが分かります。振幅が大きくなるほど出力信号の波形はひずみ、矩形(くけい)波に近づきます。しかし、バイポーラトランジスタのように、大振幅で急速に応答速度が遅くなることはありません。

次回はp型MOSFETを紹介

 次回は、今回紹介した増幅器の利得を高めるために、p型MOSFETを使いたいと思います。CMOSの特徴である相補的な(コンプリメンタリー)回路構成も紹介します。

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Profile

美齊津摂夫(みさいず せつお)

1986年に大手の通信系ハードウエア開発会社に入社し、光通信向けモジュールの開発に携わる。2004年に、ディー・クルー・テクノロジーズに入社。現在は、同社の常務取締役CTO(最高技術責任者)兼プラットフォーム開発統括部長を務めている。「大学では電気工学科に所属していたのですが、学生のときにはアナログ回路の勉強を避けていました。ですから、トランジスタや電界効果トランジスタ(FET)を使ったアナログ回路の世界には、社会人になってから出会ったといっていいと思います。なぜかアナログ回路の魅力に取りつかれ、23年目になりました」(同氏)。


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