「Qi」規格に集うワイヤレス給電、5W以下のモバイルから普及へ:ワイヤレス給電技術 Wireless Power Consortium(WPC)(1/3 ページ)
電源ケーブルを使わずに、機器に非接触で電力を供給する「ワイヤレス給電技術」。ここ数年、注目が集まっているが、一時的なブームで終わってしまうのだろうか…。2011年から始まる数年間が、今後の普及を占う節目になりそうだ。
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電源ケーブルを使わずに、機器に非接触で電力を供給する「ワイヤレス給電技術」。ここ数年、注目が集まっているが*1)、一時的なブームで終わってしまうのだろうか…。2011年から始まる数年間が、今後の普及を占う節目になりそうだ。
標準規格「Qi」が誕生
なぜ、2011年が特別な一年なのか。それは、ワイヤレス給電技術の標準規格(Qi規格)に準拠した、複数の製品が市場に登場することが理由だ。Qi規格は、近接電磁誘導を使ったワイヤレス給電技術に関する業界団体「Wireless Power Consortium(WPC)」によって、2010年7月に策定されたばかり。送電電力が5W以下の機器を対象にしており、ワイヤレス給電技術について規定した業界初の標準規格である*2)。これまで、ワイヤレス給電システムはいくつも実用化されていたが、各社独自の方式を採用していたため、なかなか製品化の動きが広がっていなかった。現在のところ、ワイヤレス給電技術を規定しているのは、Qi規格だけという状況だ。
すでに、大手電池メーカーのEnergizerと、住宅用家具やオフィス用品を手掛けるLeggett and Plattが、Qi 準拠の機器を実用化している(図1)。国内企業では、日立マクセルがQi準拠の送電パッド(充電器)とiPhone 用クレードルを、エム・シー・エム・ジャパンと協業し、2011年4月に発売する。「国内市場向けとして初のQi準拠のワイヤレス給電システムである」(日立マクセル)。三洋電機も、2011年の前半をめどにQi準拠の製品を発売する。
他にも、製品化の準備は着々と進んでいる(図2)。WPCが2010年12月に東京都内で開催した報道機関向け説明会では、合計8組(送電側が8種類、受電側が8種類)のQi準拠のワイヤレス給電システムが展示されていた。2010年9月に香港で開催された同様の説明会のときに比べ、2倍の数に増えたという。
Qi規格策定の取りまとめを担当したフィリップスエレクトロニクスジャパンの黒田直祐氏*3)は、「(2011年1月時点で)Qi規格の認証を受けた製品が複数、さらに審査待ちの製品がいくつかある」とコメントした。「WPCには、ワイヤレス給電システムをビジネスとして進めることを目指した企業が集まっている。2011年は間違いなく、さまざまなQi準拠の機器が製品化されるはずだ」(同氏)という。エム・シー・エム・ジャパンの取締役 TMDビジネス開拓担当の工藤雅道氏は、2011年1月に参加した米国最大の家電ショー「2011 International CES(Consumer Electronics Show)」の展示内容などから、「2011年には、さらにいくつかの製品が市場投入されるという雰囲気を感じた」と語った。
WPCでは、受電側機器に組み込むデバイスについては、ライセンスフリーの取り決めを交わしており、受電側デバイスの出荷台数が2014年末までに5000万台に達すれば、2015年以降も受電側はライセンスフリーの取り決めを延長する*4)。WPCでは、受電側デバイスが5000万台普及するという見通しを、「達成可能な固い読み」と捉えている。
市場調査会社も、ワイヤレス給電システムの今後の普及動向を好意的に見ているようだ。IHS iSuppliが2010年7月に発表した市場予測によれば、全世界での出荷台数は2010年の360万台から、2014年にはおよそ65倍に相当する約2億3500万台に拡大する。この他、PikeResearchが2010年11月に発表した資料によれば、2012年には10億米ドルの市場規模が、2020年には118億米ドルに拡大すると予測している。
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