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「Qi」規格に集うワイヤレス給電、5W以下のモバイルから普及へワイヤレス給電技術 Wireless Power Consortium(WPC)(2/3 ページ)

電源ケーブルを使わずに、機器に非接触で電力を供給する「ワイヤレス給電技術」。ここ数年、注目が集まっているが、一時的なブームで終わってしまうのだろうか…。2011年から始まる数年間が、今後の普及を占う節目になりそうだ。

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「最大公約数」を探り…

 WPCが2010年12月に開催した説明会では、標準化が市場にもたらす意義と、普及に向けた意気込みを語る言葉が並んだ。例えば、「ワイヤレス給電システムが標準化された今、まさに充電システムが大きく変化する時期だと考えている。オフィスや宿泊施設、商業施設/公共施設、交通機関といった生活のあらゆるシーンに展開されることで、充電の概念が大きく変わる」(三洋電機のモバイルエナジーカンパニーの充電システム事業部の事業部長である遠矢正一氏)といったコメントや、「標準化による相互運用の確保が、普及を強く後押しするだろう」(WPCのChairmanであるMenno Treffers氏)といったコメントがあった。

 WPCが誕生したのが、2008年12月。2010年7月の策定完了までおよそ19カ月と、短期間に作業が完了したことを、WPCはアピールする(表1)。各社が有する技術を集約し、いわば各技術の「最大公約数」を探りだすように、策定作業を進めてきた。19カ月という期間は、各社の思惑が入り交じった、短くも険しい道のりだったようだ。

表1
表1 近接電磁誘導を使ったワイヤレス給電技術に関する業界団体「Wireless Power Consortium(WPC)」の歩み 2008年12月に団体を立ち上げ、およそ19カ月後に標準規格(5W以下対象)を策定した。設立当初は、わずか8社だった参画企業は、2010年2月時点で72社に増えた。

 Qi規格を策定するに当たり、WPCが重視したことが2つあった。1つは、当然のことながら、近接電磁誘導を使ったワイヤレス給電システムの互換性を確保する枠組みを作ること。送電側デバイスと受電側デバイスのアーキテクチャや、制御信号のプロトコル、安全性を確保する仕組みなどを規定した。

 もう1つは、「フリーポジション」の実現である。フリーポジションとは、送電側(例えば、パッド状の充電器)に対して、受電側デバイス(例えば、モバイル機器)を、どの位置に置いたときでも電力を供給できるようにすることを指す。

 そもそも、Qi規格に採用した電磁誘導とは、送電側デバイス(コイル)が生成した交番磁界*5)に、受電側デバイス(コイル)を鎖交*6)させると、受電側デバイスに起電力が発生するという現象である。送電側コイルに対して、受電側コイルの中心軸がずれるほど、受電側コイルに鎖交する磁束は減る。それに伴い、電力を送る効率も下がる。

*5)交番磁界とは、時間とともに振幅と向きが変化する磁界のこと。

*6)鎖交とは、送電側が形成した磁束と受電側コイルが交差している状態のこと。

 すなわち、電磁誘導を使うということと、受電側コイルを置く場所を自由にするというアイデアは、そもそも相いれない考えである。しかし、送電側と受電側を厳密に位置合わせする必要があるならば、モバイル機器のコネクタにACアダプタを挿すという動作とあまり変わらない。そこでWPCでは、従来のワイヤレス給電システムとはひと味違った仕組みをQi規格に盛り込み、フリーポジションを実現した。

 具体的には、Qi規格では送電側デバイスとして3つの方式を規定した(表2)。1つは、固定位置型。残る2つは、自由位置型である。固定位置型では、送電側と受電側のそれぞれに磁石を取り付け、吸引力で受電側を送電側に引きつける。

表2
表2  「フリーポジション」を実現する3種類の送電側デバイス *1)出典:エム・シー・エム・ジャパン。*2)日本国内に向けては、エム・シー・エム・ジャパンが販売活動を進めている。

 自由位置型の1つは「可動コイル型」と呼ぶ。送電パッドに組み込んだ小型のモータで送電側コイルを動かし、受電側コイルとの位置をきっちり合わせる。送電パッドには、X軸走査用のコイルアレイとY軸走査用のコイルアレイを敷き詰め、それぞれに微弱な検出電流を流している。受電側コイルを置くと、置かれた部分の走査用コイルと受電側コイルが結合し、検出電流の状態が変わる。検出電流の変化を監視することで、受電側コイルの位置を検出する仕組みである。

 もう1つの自由位置型は、「コイルアレイ型」と呼ぶ。送電パッドには、ハチの巣状に複数のコイルが敷き詰められている。受電側コイルが置かれた場所近傍の送電側コイルのみを励起することで、受電側に電力を効率良く伝える。

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