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次世代照明が第2の普及期へ、LED蛍光灯と有機EL照明が主役にLED/発光デバイス 有機EL(2/2 ページ)

白熱電球を置き換えるLED電球の勢いが著しい。白熱電球がなくなる日が見えてきた。白熱電球という点光源から、蛍光灯を置き換える線光源、さらにまったく新しい面光源へ、次世代照明が次々と広がっていく。LED 蛍光灯は素子の効率改善と標準化の後押しを受けて、LED 電球に続く勢いが期待できる。面光源を実現する有機EL 照明の製品化も始まった。次世代照明の将来をまとめた。

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有機EL照明が立ち上がる

 第2の普及期に入ったLED照明に続くように、照明用の白色有機ELパネルが、いよいよ試作開発から製品化の段階に入った。

 照明用有機ELパネル専業のLumiotec(ルミオテック)は、2011年1月から、形状の異なる5モデル10タイプの有機ELパネルの出荷を開始する(図6)。照明用有機ELパネルの量産出荷は世界初だと主張する。年間生産規模として6万枚を見込む。

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図6 ルミオテックの照明用白色有機ELパネル 正方形の2製品(145mm×145mm×2.1mm、97.6mm×97.6mm×2.1mm)の他、長方形の3製品がある。色温度が3000K(電球色、図中左)と5000K(昼白色、図中右)の合計10品種を用意した。重量は80g〜133gである。145mm角のパネルの価格は3万円である。出典:ルミオテック

 2008年の同社発足時*2)には「早ければ3年後に量産出荷が可能になり、量産開始後3年以内に、5000億円ある国内の照明市場の20%に相当する市場を有機ELパネルで作り出したい」(同社代表取締役社長の重永久夫氏)と意気込みを語っていた。

*2)ルミオテックは、三菱重工業、ローム、凸版印刷、三井物産と山形大学教授の城戸淳二氏が出資した照明用有機EL専業メーカーである。

 これまでルミオテックがサンプル品として出荷していた有機ELパネルと今回の製品の差は、発光効率である。「製品化にあたり、赤色を発色する材料にりん光材料を用いた。従来の蛍光材料と比べて発光効率が高く、有機ELパネル全体の発光効率が2倍に高まった」(パネル設計に協力するローム ディスプレイ研究開発センターの田中将史氏)。今後は青色と緑色をそれぞれりん光材料と置き換えることでより発光効率を高められるという。製品化にあたっては、輝度半減寿命も4000時間から1万時間に延ばした。

 ルミオテックの有機ELパネルを使った照明器具の開発も進んでいる。照明器具などを開発するタカハタ電子は、ルミオテックの製品を利用した灯具を開発中だという(図7)。

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図7 タカハタ電子の有機EL照明器具 ルミオテックの有機ELパネルを使って試作した。照明のオンオフや照度を無線で制御している。

 ルミオテック以外にも、有機ELパネルの開発に取り組む企業は少なくない。NEC、カネカ、コニカミノルタホールディングス、パナソニック電工、三菱ケミカルホールディングス、ロイヤル フィリップス エレクトロニクス、ロームなどである。

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図8 ロイヤル フィリップス エレクトロニクスが試作した電源内蔵型有機EL照明器具 230Vの家庭用交流電源で動作し、欧州諸国の電源電圧に適合する。出典:ロイヤル フィリップス エレクトロニクス

 現在の研究開発目標は、高輝度化、高寿命化、高効率化を同時に進めながら、演色性を高めるとともに製造コストを引き下げることである。有機ELパネルならではの軽量化やフレキシブル基板に取り組むメーカーもある。ロームは有機ELパネルの設計でルミオテックに協力する他、薄型で曲げられるパネルの開発に取り組んでいる。ロイヤル フィリップス エレクトロニクスは有機ELモジュール「Lumiblade」を開発しており、2010年9月には電源内蔵型の試作品を公開した(図8)。輝度3000cd/m2、消費電力3Wの直流駆動品の発光効率は25lm/Wに達するという。ただし、発光面の寸法は119mm×37mmと比較的小さい。

LEDを超えた照明を目指す

 三菱ケミカルホールディングスは、「2011年に調色、調光可能な照明用有機ELパネルを発売した後、背面が透けて見えるシースルー型照明パネルや曲面状に曲がるフレキシブル照明パネルを順次製品化する」(同社の代表取締役社長を務める小林喜光氏)。有機EL照明事業の売上目標を、2015年度で300億円、2020年度で1000億円と公表している。

 パイオニアと協力関係を築いており、塗布型有機EL照明について共同研究を進める他*3)、パイオニアが照明用有機ELパネルを三菱化学に提供する。器具の開発はOEMで進め、開発した照明器具を三菱化学のVerbatimブランドで製品化する。

*3)三菱ケミカルホールディングスの100%子会社である三菱化学とパイオニアが有機EL照明に関する業務・資本提携を2010年に結んでいる。

 2011年に製品化する時点では有機EL材料を蒸着法で製造し、2012年に輝度と発光効率を高めた後、2013年の後半から2014年にかけて発光層を含む各層を塗布法で製造することで低コスト化を実現する*4)

*4)三菱化学は有機薄膜太陽電池の研究開発を2007年ごろから続けており、有機ELパネルと材料や構造などを相互に応用できるという。

 パナソニック電工と出光興産、タツモは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業「有機EL照明の高効率・高品質化に係る基盤技術開発」(2009年〜2013年)を受け、高効率・高演色有機EL照明の開発を進めている。研究開発の内容は3点ある。照明用素子自体の性能向上、蒸着法の改善、塗布法の確立である。

 照明用素子の性能目標は、平均演色評価数90、発光効率35lm/W以上、輝度1000cd/m2という条件下での寿命4万時間である。寿命4万時間はLED照明に匹敵するほど長い。

 製造技術の改善では、製造コストの引き下げを狙っている。現在主流である蒸着法では、狙った有機ELパネル部材以外に材料が拡散してしまい、発光材料使用効率が20%を下回ることが多い。「発光材料が材料コストに占める割合を考慮すると、材料の使用効率の引き上げがどうしても必要だ」(パナソニック電工)。委託事業では、材料使用効率70%以上、成膜速度8nm/秒以上を目指す。

 塗布技術では、膜厚30nm以下、塗布速度200mm/秒以上を確立する。大面積化が可能になるため、製造コストの引き下げに役立つ。以上3種類の技術を確立できれば、高演色型の次世代省エネ照明器具が実現できるという。

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