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第27回 n型MOSFETにp型追加して利得向上Analog ABC(アナログ技術基礎講座)(1/2 ページ)

前回(第26回)はn型MOSFETを使い、20dB程度の利得を持つアンプを作りました。今回は、この増幅回路にp型MOSFETを追加して、さらに利得を高めたいと思います。

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 前回(第26回)はn型MOSFETを使い、20dB程度の利得を持つアンプを作りました。今回は、この増幅回路にp型MOSFETを追加して、さらに利得を高めたいと思います。

 n型MOSFETとp型MOSFETを組み合わせると利得が高められる理由は、能動負荷を使うからです。前回は、負荷に抵抗を使っていました。これを受動負荷と呼びます。これに対して、MOSFETやバイポーラトランジスタのドレインやコレクタが負荷として接続される場合、能動負荷と呼びます。

 能動負荷の出力インピーダンスは非常に高いため、大きな負荷抵抗が接続されたことに相当し、利得を高められるのです。バイポーラトランジスタでも同じ効果が得られます(本連載の「第16回 差動対がオペアンプに変身(1)〜能動負荷で利得を高める〜」で紹介しています)。

 p型MOSFETは、n型MOSFETとは対称の特性を持つことが理想的です。これが、「CMOS」の最初の文字「C(Complimentary)」の意味するところです。図1に、p型MOSFETとn型MOSFETの直流特性を示しました。図上がn型、図下がp型です。Vgsをパラメータとして、0.7V、0.8V、0.9V、1.0V、1.1V、1.2V、1.3Vの結果を表示しています。

図1
図1  p型MOSFETとn型MOSFETの直流特性 図上がn型、図下がp型です。p型とn型の違いは、電流が逆に流れているだけで、グラフは対称になっています(今回は、意図的に特性がちょうど対称になるようモデルパラメータを調整しています)。

 p型とn型の違いは、電流が逆に流れているだけで、グラフは対称になっています。今回は、意図的に対称的な特性になるようモデルパラメータを調整していますが、現実にこのようにMOSFETを製造するのは非常に困難です。通常は、p型MOSFETはn型の1/3程度しか電流が流れません。

 現在、CMOS製造プロセスがここまで広く使われるようになったのは、材料(シリコン)が安価である上に、簡単な構造で作りやすかったこと、そして特性劣化が小さい相補型デバイスが作れることが理由ではないかと思います。

 バイポーラトランジスタにも相補型はありますが、p型トランジスタの性能はn型に比べて大きく劣ります。この性能差は、トランジスタ構造が原因で、バイポーラトランジスタの構造はn型とp型では大きな差*1)があります。一方、MOSFETでは基本的な構造はn型とp型で同じです。従って、両者の性能の差はバイポーラトランジスタより少ないのです。

*1)npnトランジスタの電流増幅率βは100程度ですが、pnpトランジスタのβは5程度しかないのが一般的です。

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