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全ての携帯へNFC、ネットと日常生活を「タッチ」が結ぶ無線通信技術 NFC(2/3 ページ)

さまざまなものに触れることで情報を伝える近距離の無線通信技術「NFC(Near Field Communication)」。2011年以降、NFC とスマートフォンが組み合わさることで、新しい用途が広がっていく。

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短所が、長所に転ず

 ここ最近、NFCをキーワードにしたニュースを列挙するときりがない、というほど数多くのニュースがさまざまな企業から発信されている。NFCの通信距離はわずか10cm程度、伝送速度は1Mビット/秒に達しない(図4)。通信距離が短くて、遅い無線に、なぜこれほどまで注目が集まっているのだろうか―。

 一般に、無線通信技術は「より遠くに、より速くデータを届けること」を命題に、研究開発が進められてきた。例えば、携帯通信技術は、「2G」から「3G」、「4G」へと進化することで、伝送速度を継続的に向上させてきた。2009年7月に日本国内でも商用サービスが始まったWiMAXは、伝送速度が高いことと、データの伝送範囲が広いことを両立させたことが最大の特徴だ。

図4
図4 無線通信技術のなかでのNFCの位置 NFCは、通信距離が短く、伝送速度は遅い。しかし、直感的にデータを送れることや、データを送るときに人の動きが伴うことが特徴だ。

 この他、ノートPCやタブレットPC、スマートフォン、携帯電話機といった身の回りの機器に広く採用されているBluetoothやWi-Fiは、高速化を目的にした仕様改善が続けられている。最新規格を使ったときのWi-Fiの物理層での伝送速度は、最大600Mビット/秒にもなる。

 これらの無線通信技術と比べると、NFCの通信距離は短く、伝送速度も低い。ただ、わずか10cmの通信距離という仕様が逆に、NFCを引き立てる特徴となった。通信距離が10cmと短いため、データをやりとりするには通信対象となる機器にタッチさせたり、かざす必要がある。このため、利用者の何らかの行動と、データを移動した後のアプリケーション/サービスを結び付けやすいわけだ。

NFCは、ISO/IEC規格

 NFCという用語そのものは、近距離でデータをやりとりすることを表す汎用の言葉である。しかし、現在、NFC対応のスマートフォンといったような使い方をするときは、国際標準規格を取りまとめる「ISO(国際標準化機構)」および「IEC(国際電気標準会議)」で規定された規格を指すのが一般的だ。

 ただ、ISO/IEC規格は、無線通信プロトコルを規定しており、それより上位の階層は規定されていなかった。しかし、NFC Forum*1)が2010年12月に、無線通信プロトコルより上位の階層を規定した標準仕様を発表するなど、アプリケーションやサービスの互換性を確保することを目指した作業が進んでいる(図5)。

*1) NFC Forumは、ソニーとNokia、Royal Philips Electronicsが2004年に設立した。サービスやアプリケーションの互換性を確保するための仕様策定や、認定プログラムの実施、普及を促すためのさまざまな活動を進めている。現在、さまざまな業界から130社以上が参加している。

図5
図5 NFC Forumの標準仕様のコンセプト NFCを使ったサービス/アプリケーションの互換性の確保が目的。カードやタグをはじめ、スマートフォン、タブレットPC、家電といったデバイスに対応した仕様である。

非接触カード技術には多くの規格

 従来より、非接触カード技術や、非接触の相互接続技術には、無線通信プロトコルを規定した複数の規格があった。例えば、非接触カードアプリケーションに使われている「ISO/IEC 14443 TypeA」や「ISO/IEC 14443 TypeB」、Felicaに使われている「JIS X6319-4」、RFIDタグ用の無線通信プロトコル「ISO/IEC 15693」がある。

 現在、NFC規格とされているのは、上に挙げたISO/IEC規格をまとめ、機器間通信を追加したものである。具体的には、2003年12月に策定された「ISO/IEC 18092(NFCIP-1)」と、これを拡張した「ISO/IEC 21481(NFCIP-2)」がある。ISO/IEC 18092(NFCIP-1)は、ISO/IEC 14443 TypeAとFelicaプロトコル、機器間通信をまとめたもの。一方のISO/IEC 21481(NFCIP-2)には、非接触カード用のISO/IEC 14443 TypeBや、RFIDタグ用のISO/IEC 15693がさらに統合されている。

サービス互換性を確保へ

 前述のように、ISO/IEC規格は無線通信プロトコルのみを規定しているため、実際のサービスやアプリケーションに実装するときには、互換性の確保が課題になる。

 NFC Forumの標準規格はこの課題の解決を目指したものだ。2010年12月に発表した標準仕様は、ISO/IEC規格を基にしており、データフォーマットやデータを読み込んだり、書き込んだりするときのプロトコルなど合計15の仕様で構成している。NFC Forumの標準仕様の第1弾という位置付けで、「First Wave」と呼ぶ。

 NFC Forumの標準仕様には、3つのモードがある。1つ目は、カードエミュレーションモード(NFC Card Emulation Mode)。電子マネーや電子チケット、交通乗車券カード、非接触クレジットカードを実現するときのモードである。2つ目は、リーダー/ライターモード(Read/Write Mode)である。NFCタグからデータを読み込んだり、書き込んだりするモードである。3つ目は、相互接続モード(Peer to Peer Mode)で、機器間の接続に使う。例えば、Wi-FiやBluetoothのペアリング設定や、機器間のデータのやりとりに使う。3つのモードを切り替えることで、どのようなアプリケーション/サービスにも対応できるようにする。

 2011年3月8日〜11日の期間に開催された「第13回 IC CARD WORLD 2011(ICカード展)」において、「NFCのテイクオフ」と題したセミナーに登壇したNFC Forumの議長で、ソニーFelica事業部グローバル標準化渉外部統括部長の田川晃一氏は、NFC Forumの標準仕様が業界に与える良い影響を強調した。

 「NFC Forum仕様は、オープンな国際標準規格であるため、どのような企業でも全世界を相手に勝負ができる。海外の企業は、このことを非常に歓迎している」という。同氏は、「NFCの業界は、非常に盛り上がっている。とても元気だ」という言葉で、講演を締めくくった。現段階で、NFCのRFブロックなどまだ策定中の仕様がある。これについては「Second Wave」として、2012年中ごろに発表する予定である。

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