全ての携帯へNFC、ネットと日常生活を「タッチ」が結ぶ:無線通信技術 NFC(3/3 ページ)
さまざまなものに触れることで情報を伝える近距離の無線通信技術「NFC(Near Field Communication)」。2011年以降、NFC とスマートフォンが組み合わさることで、新しい用途が広がっていく。
製品投入を多くの企業が表明
まだ、NFCスマートフォンの機種は多くないが、これから採用機種が急速に増えていくことが明確に見えてきたというのが、現在の状況だろう。NFCスマートフォンを製品化することをさまざまな端末メーカーが意思表明しているほか、NFCスマートフォンを使った数多くの実証実験が実施されている。
Googleは、 携帯電話機(スマートホン)を開発するためのソフトウェア・プラットフォーム「Android 2.3」を、NFCに標準対応させた。Googleは同社ブランドのスマートフォン「Nexus S」にNFC機能を搭載したほか、Android 2.3を採用したSamsung Electronicsの「Galaxy S II」は、オプションでNFCに対応している。この他、HTCやResearch in Motion(RIM)、ZTEといった端末メーカー各社も、時期はさまざまではあるものの、NFCスマートフォンを投入することを表明している。
国内の通信事業者各社も、NFCを巡る動きを活発化させている。KDDIは、NFC対応の携帯電話機を使った実証実験を、2010年5月に開始した。クレジット決済機能に加え、リーダー/ライター機能や、Bluetooth連携機能など、複数のアプリケーションを実利用に近い形で実証することが目的である。ソフトバンクモバイルも、NFCスマートフォンを使った非接触クレジットカードの実証実験を2011年1月に開始した。
2011年3月のIC CARD WORLD 2011(ICカード展)では、NXPセミコンダクターズやルネサス エレクトロニクスが、NFC対応の半導体チップを紹介していた。NXPセミコンダクターズは、携帯電話機やスマートフォンを対象に、NFCコントローラIC「PN544」や、セキュリティIC「SmartMX」、この2つのICを1つのパッケージに実装したSiP「PN65X」を製品化している。PN544は、SIMおよびHost Controller Interface(HCI)のSingle Wire Protocol(SWP)接続が可能。消費電力を抑制するために、バッテリーオフモードと低消費電力モードを用意している。
図6 NXPセミコンダクーズが提供している半導体チップとソフトウェア NFCコントローラIC「PN544」や、セキュリティIC「SmartMX」のほか、NFCコントローラICに載せるファームウェアや、ベースバンドプロセッサに載せるNFCミドルウェア、NFC用APIを提供している。出典:NXPセミコンダクターズの資料を基に、本誌が作成
同社では、ハードウェアのほか、NFCを実現するためのソフトウェアも提供している(図6)。具体的には、NFCコントローラICに載せるファームウェアや、ベースバンドプロセッサに載せるNFCミドルウェア、NFC用APIである。これらのソフトウェアは、オープンソースとしてGoogleのAndroid 2.3に採用されているという。「基本的なソフトウェアはすでに用意されており、NFC対応機器の開発を迅速に進められるだろう」(同社)。
ルネサス エレクトロニクスは、NFCコントローラを搭載したセキュアマイコン「RF21S」を、ICカード展に出展していた。同社のセキュアマイコン「RS-4」の機能と、NFCコントローラ機能などを1チップに集積している。電子決済カードや交通乗車券カードを1チップで実現できるという。
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