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「3軸の磁界を実際に測るホールエンコーダは業界初」、austriamicrosystemsが車載向け製品化センシング技術

3軸検出によって取り付け位置の機械的な設計自由度を高められることや、競合他社品に比べて高い検出精度が得られることが特長だという。

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 オーストリアのアナログ半導体メーカーであるaustriamicrosystems(オーストリアマイクロシステムズ)は、X/Y/Z方向の磁界成分の大きさを検出する3軸ホールエンコーダICファミリ「AS540x」を発表した。自動車や産業機器に組み込んで、可動部品の絶対位置を非接触で検出する用途に向ける。「3軸検出によって取り付け位置の機械的な設計自由度を高められることや、3軸検出をうたう競合他社品に比べて高い検出精度が得られることが特長だ」(同社でオートモーテイブ事業担当上級副社長兼ジェネラル・マネジャーを務めるバーンド・ゲスナー(Bernd Gessner)氏)という(図1)。2011年5月17日に東京都内で開催した報道機関向け説明会で発表した。

図1
図1 austriamicrosystemsのバーンド・ゲスナー氏 オートモーテイブ事業担当上級副社長兼ジェネラル・マネジャーを務める。

 AS540xは1枚の半導体チップ上に、3軸それぞれの磁界成分の大きさを検出するホール効果素子を個別に作り込むとともに、信号処理回路や外部インタフェース回路などを集積したICである(図2)。磁界の発生源となる磁石と対にして使い、両者の相対位置の変化を検出する。例えば、自動車のクラッチやブレーキのペダル、シフトレバー、ハンドル、サイドミラー、ヘッドライトなどの可動部に磁石を埋め込んで、ホールエンコーダICを固定しておけば、可動部の絶対位置の情報を取得することが可能だ。

図2
図2 X/Y/Zの3軸それぞれに沿った磁界の大きさを個別に検出するホール素子を集積

 同社によれば、ホール素子を使う3軸エンコーダICは既に他社が製品化していたが、それらは1軸の検出に対応したホール素子しか作り込んでいないという。「残りの2軸については、磁力線の向きを変える磁性材料を利用して、相当する成分を模擬的に作り出し、その大きさを検出することで間接的に求める仕組みだ」(日本法人のオーストリアマイクロシステムズ・ジャパンでフィールド セールス エンジニアを務める石海雄介氏)。これに対し同社の今回の製品は、3軸それぞれを直接、個別のホール効果素子で検出するため、精度を高めやすい。「3軸の磁界をこのように実際に測定するホールエンコーダは業界初だ」(同氏)。この他、精度をさらに高める工夫も盛り込んだ。すなわち、前述した3軸それぞれに対応するホール素子を組み合わせた回路を複製して2回路集積し、差動原理によって外部磁場の影響を除去している。これらの結果、絶対位置の情報を求める際に、10μmの分解能が得られ、誤差は0.4mmに抑えられるという。

 動作温度範囲は−40〜+150℃。検出値を出力する外部インタフェースは、SPIもしくはSENT(Single Edge Nibble Transmission)の他、PWM出力も備えており、ユーザーは用途に応じて任意のインタフェースを利用可能だ。電源電圧範囲や、保護機能およびアナログ出力の有無が異なる複数の品種を用意している(図3)。

図3
図3 AS540xのファミリ構成 電源電圧範囲や、保護機能およびアナログ出力の有無が異なる。これらのうち、「AS5400」は既にサンプル出荷中だという。出典:austriamicrosystems

今後5年で日本市場の売上比率倍増を目指す

 austriamicrosystemsのゲスナー氏によれば、同社の全世界での売上高のうち、日本市場の割合は現在のところ5%にとどまる。同社はこれを今後4〜5年程度で10%に倍増させる目標を設定しているという。「特に自動車分野は、日本が世界で最も重要な市場の1つだ。この市場への対応を強化するため、2012年には日本に解析ラボを開設する計画である」(同氏)。

 なお同社は、「自動車技術展:人とくるまのテクノロジー展 2011」(2011年5月18〜20日にパシフィコ横浜で開)に出展し、今回発表したホールエンコーダのデモを日本で初めて公開する。

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