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ルネサスのマイコンが6〜10月に供給不足へ、外部ファウンドリ含む代替生産対応を推進ビジネスニュース 企業動向

2011年5月18日に2011会計年度の決算を発表し、同日に東京都内で開催した報道機関向けの決算説明会で、同社代表取締役社長の赤尾泰氏が説明した。

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 ルネサス エレクトロニクスは、東日本大震災で主力工場が被災した影響で、車載マイコンや汎用マイコンの一部について、顧客への供給が2011年6〜10月にかけて一時的に不足するとの見通しを示した。震災以前に那珂工場(茨城県ひたちなか市)が生産を受け持っていた製品である。ただし2011年10月末には、被災前の供給レベルに相当する製品を市場に供給できるようになる見込みだ。同工場の生産再開を前倒しで進めていることに加えて、グループ内の他工場や外部ファウンダリによる代替生産も活用する(参考記事)。同社は2011年5月18日に2011会計年度(2010年4月〜2011年3月)の決算を発表しており、同日に東京都内で開催した報道機関向けの決算説明会で同社代表取締役社長の赤尾泰氏が述べた(図1)。

図1
図1 ルネサス エレクトロニクス代表取締役社長の赤尾泰氏 2011年5月18日に開催した決算説明会に登壇した。

 同説明会で赤尾社長は、東日本大震災の影響と復旧状況について説明した。今回の震災で同社は、「前工程を担当する5つの工場と、後工程を受け持つ3つの工場が被災し、生産停止を余儀なくされた」(同氏)という。ただし現在は、那珂工場を除く全ての拠点で生産を再開し、震災前の供給レベルに復旧している。那珂工場についても、6月には一部ラインで限定的な生産能力ながら生産を再開(ウエハー投入)するメドがたった。

 震災以前に那珂工場で生産していた製品については、これまでは在庫を出荷することで顧客への供給を続けてきたが、「5月いっぱいは在庫で対応できるが、6月からは供給不足になる」(同氏)見通しだという。既に代替生産によって用意した製品の出荷を4月から始めているが、現時点ではその供給レベルは低い(図2)。6月以降、代替生産の供給レベルを高め、8月には震災前の供給レベル(製品の出荷数量ベース)の半分を超えるレベルまで回復させる予定である。さらに8月には、那珂工場で6月に投入したウエハーが後工程を経て、製品として出荷できるようになり、その供給レベルも月を追うごとに改善する見込みだ。そして10月末までに、被災前の供給レベルまで戻す。この6〜10月の間に供給が不足する製品の顧客への分配については、「過去数年間の取引の実績や、震災前に受注していた数量などに応じて、公平に配分していく」(同氏)と説明した。

図2
図2 那珂工場で生産していた製品の供給能力のイメージ図 緑色で示した部分が、グループ内の他工場と外部ファウンダリによる代替生産分。薄い水色で示した部分が、那珂工場で生産する分である。

事業継続計画を見直しへ

 ルネサス エレクトロニクスが今回発表した2011会計年度通期の決算は、売上高が1兆1379億円で、「震災の影響もあり、想定を下回った」(赤尾社長)ものの、営業損益については145億円の黒字を確保しており、「NECエレクトロニクスとルネサス テクノロジの統合初年度の経営目標として掲げた、通期営業黒字を達成できた」(同氏)。構造対策の実行や統合のシナジー効果などが奏功したと説明する。

 東日本大震災による損失額については、655億円と見積もった。保険による補填(ほてん)として160億円を見込み、それを差し引いた495億円を今回の決算で震災による特別損失として計上している。「工場の復旧が進んでいるものの、今日現在はまだ途上である。一区切りをつけるには、もうしばらく時間がかかるだろう。ただ、今回の震災が大きな教訓になったことは確かだ。事業の方向性や会社のあり方など、見直しが必要だという意識を経営陣で共有している。BCP(Business Continuity Plan、事業継続計画)も見直す。それらを早急にまとめ、2011年7月に2012年3月期の業績予想を公表するタイミングで、改めて説明したい」(同氏)。

 BCPの見直しについては、その一環として、NECエレクトロニクスとルネサス テクノロジの統合後に進めてきた「ファブネットワーク」を今後いっそう推進していくと表明した(図3)。同社のいうファブネットワークとは、1つの製品を自社の単一の工場だけでなく、グループ内の他工場や外部の半導体ファウンダリでも生産できるような仕組みを指す。「需要変動や突発的な事象に対応できるよう、変動力を強化する」(同氏)ことが狙いである。

図3
図3 ファブネットワークの推進を加速へ ファブネットワークでは、ある製品を社内外の複数の工場で製造できる体制を構築する。そのため、ファブネットワークに組み込む各工場で、半導体製造プロセスを共通化する取り組みを進めるという。

 ただ赤尾社長は、「ファブネットワークの推進という方針自体は、統合時に定めて実行してきたもので、震災を受けて急ごしらえしたわけではない」と強調する。実際、那珂工場で震災前に生産していた製品についても、前述の通り既に4月から代替生産品を出荷しており、その6割程度をグループ内の他工場が受け持ち、残る4割は外部ファウンダリが担当する。いずれも「震災以前からファブネットワークとして利用していた工場で、品質の実績もある。顧客には、那珂工場で生産したものと同じ品質だと説明している」(同氏)という。供給レベルが震災前のレベルに戻るとする2011年10月末の段階では、これらの代替生産の比率が約5割だと想定する。

 外部ファウンダリとしては現在、那珂工場の200mmラインで生産していた製品の代替生産をGLOBALFOUNDRIESに、300mmラインの製品をTSMCにそれぞれ委託している。「那珂工場の供給レベルを将来、震災前のレベルまで完全に復旧させるかどうか。それも大きなポイントであり、現在検討しているところだ。それについても7月に説明する」(同氏)。

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