Appleの最新プロセッサ「A5」、倍増したチップ面積の謎に迫る(後編):製品解剖 プロセッサ/マイコン(2/4 ページ)
「iPad 2」に搭載されたA5プロセッサは、「iPad」のA4プロセッサに比べてチップ面積が34mm2も増えた。この増加分はA4のチップ面積の64%に相当する。AppleはCPUとGPUをデュアル化しただけでなく、他にも差別化につながる回路を組み込んだに違いない。
A4は他のSoCと差別化できているのか
いろいろ考えをめぐらせてみたが、結局のところA4は他のSoCと差別化を達成しているのだろうか? これまでに引証したA4とS5PC110の類似性という単純な事実から、答えは「ノー」だ。とはいえ、筆者の手元にはこれ以上に幅広い見解や決定的な主張を述べられるようなデータはない。
A4プロセッサの2010年1月の公式発表に話を戻そう。覚えておきたいのは、A4がiPadというまったく新しいプラットフォームの中で離陸したチップだったということだ。もし皆さんが天文学の研究に取り組んでいるというならば、ビジネス面の考慮は不要だろう。しかしビジネスの現場では、収支決算が極めて重要である。Appleとて同じだ。つまりA4では、非常に保守的な設計が意図的に採用された可能性がある。iPadという新しいプラットフォームに使う基幹部品である。そのリスクを最小化しようとするのは自然だ。iPadは、他にあまりに多くのリスクを抱えていた。基幹部品で危ない橋を渡る余裕はなかっただろう。
今となれば、「iPad以前」の時代を思い描くのは奇妙に感じる。だが思い出してほしい。私たちはそれ以前に一般消費者向けのタブレットなど耳にしたことがなかったし、金融アナリストらは「Appleはネットブックの波に乗り遅れている」と文句を言っていたのである。そうした声は、ぴたりとやんだ。
先にも述べた通り、A4はその後、2010年のうちにAppleの全てのiOSデバイスに搭載が進んだ。現在、それらのA4搭載デバイスはそれぞれの市場を独占していたり、主導していたりする。1つ例外があるとすればApple TVだが、これはまだ市場自体がうまく定義されていない段階のように思える。A4は際立ったチップではない。それゆえに、一連のiOSデバイス群の市場における成功は、プロセッサ以外のさまざまな要素によってもたらされたことは明らかだ。それはAppleのマーケティングであり、製品の全体的な設計であり、システム部品の設計と統合である。そして、たぶん最も重要な要素は、ソフトウェアだった。
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