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成長の鍵は産業オートメーションと海外市場、オムロンが長期戦略を策定ビジネスニュース 企業動向

新長期戦略の要旨は3つ。1つ目は産業オートメーション分野の強化、2つ目は新興国市場での売上高拡大、3つ目は環境分野を中心にした新規事業の立ち上げである。

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 オムロンは、2011年7月13日に報道機関向け事業戦略説明会を開催し、2020年度までに売上高を1兆円以上、営業利益率を15%以上に高めることを目標に掲げた新長期戦略「Value Generation 2020」の詳細を明らかにした(図1)。

 新長期戦略の要旨は3つ。1つ目は産業オートメーション分野の強化、2つ目は新興国市場での売上高拡大、3つ目は環境分野を中心にした新規事業の立ち上げである。同社の2010年度の売上高は6178億円、営業利益率は7.8%である。ここ10年の売上高の成長率が4%であることなどを考慮すると、挑戦的な高い目標を設定したことになる。

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図1 2011年6月21日に代表取締役社長に就任した山田義仁氏

産業オートメーションに「おもいっきり注力」

 オムロンは、事業戦略を実行する上で重視する視点として、「GLOBE」と「EARTH」という2つを掲げ、2020年度までのおよそ10年間を2つのステージに分けた。

 まず、2013年度までを「GLOBE STAGE」と名付け、世界の各地域での収益力を高める構造作りに取り組む。この期間で収益力を強化し、次のステージの投資原資を確保する。2010年度を起点とした3年後には、売上高を7500億円へ、営業利益率13%に高めることを目標にする。その後の2013年度以降の期間を「EARTH STAGE」と名付け、新たな価値創造による成長を目指す。

 それぞれのステージで、先に述べた3つの基本戦略を進める。同社の「インダストリーオートメーション事業(IAB)」、「家電・通信用電子部品事業(EMC)」、「自動車用電子部品事業(OAE)」、「社会システム事業(OSS)」、「健康・医療機器事業(OHQ)」という5つの事業領域のうち、産業オートメーション製品が関係するIABとEMCの売上高は2010年度において全体の58%を占める(図2)。

 新長期戦略では、既に高い売上高比率を占める産業オートメーション分野をさらに強化すると決めた。市場の成長が見込め、しかもオムロンの技術力とうまくマッチするという理由からだ。

 市場性に関しては、例えば中国では人件費の高騰などを背景に生産拠点の省人化の流れが急速に進んでおり、産業オートメーション機器のニーズが高い。技術力の観点では、同社がコア技術と位置付ける「センシング&コントロール技術」を同分野に展開することで、競合他社に対して優位に立てると説明した。

 同社は過去10年、産業オートメーション関連事業に次ぐ新たな事業の柱を立ち上げようと苦心していた。この方針を転換し、市場の伸びが期待できる産業オートメーション関連の事業に「おもいっきりフォーカスする」(同社)。

 産業オートメーション関連の事業は、同社の中で非常に高い利益率を上げている。この事業領域をさらに強化することで、先に述べた2020年度までの目標を達成したい考えだ。産業オートメーション製品が関係するIABとEMCの売上高を、2020年度には2010年度の2倍に相当する7000億円に高めることが目標だという。

図1
図2 オムロンの事業構成と2010年度の売上高

新規事業は「環境」に注力

 2つ目の基本戦略は、前述の通り、産業オートメーション分野の市場拡大が著しい中国を中心に、インドを含むアジア地域や南米地域への取り組みを強化することである。これらの新興国市場を対象に、産業オートメーション製品に加えて、ヘルスケア製品や車載部品を売り込む。新興国市場の2020年度の売上高を、2010年度の2.5倍に相当する4000億円に引き上げることが目標である。

 3つ目の基本戦略は、「最適化新規事業」の創出である。同社のいう最適化新規事業とは、環境への配慮と生産性/効率性を両立させた新たな事業領域のこと。その中心となるのが環境事業である。消費電力量の見える化といった「省エネ」関連や、太陽光パネルが生み出した電力のパワーコンディショナー制御といった「創エネ」関連の製品領域でも、同社のセンシング&コントロール技術が生きると説明する。

 この他、ヘルスケアとインターネットを連携させた新たな事業領域にも注目している。「ヘルスケア端末の情報をインターネット上のサーバに蓄積・解析して、病気の予防につなげるという機運が高まっている。一般利用者に提供するインターネットサービスの事業化も含め、新規事業を考えていく」(同社)。最適化新規事業の2020年度の売上高は、2010年度の7.8倍に相当する1000億円を目指す。

「変革に全力で取り組む」

 事業戦略説明会には、2011年6月21日に代表取締役社長に就任したばかりの山田義仁氏が登壇した。説明会の冒頭、同氏は「オムロンに対してどのような印象をお持ちでしょうか」という言葉でプレゼンテーションを始めた。

 「昔は大きく成長していたが、最近は成長力が落ちている。安定した企業だが、話題性が乏しくなっている。もしかすると、このように見られているかもしれないが、われわれはそれを決して良しとはしていない。技術革新を起こせる、若々しい、世界市場を相手に隆々と成長するといった形容詞で語られる企業を目指す。不確実で変化の激しい時代だからこそ、挑戦することを重要視したい。企業や組織の風土も含め、変革に向けて全力で取り組んでいく」(同氏)。

 企業風土の変革を具現化するために、組織体制を刷新し、新たに定めた長期戦略に取り組む。長期戦略を策定するのは今回も含めて3回目だが、体制の変更とともに長期戦略を策定したのは今回が初めてだという。

 「ここまで変化させるのは、相当大変なもの」(同氏)と語るほど、組織体制を大きく変化させた。具体例を3つ挙げた。1つは、オムロンでは決して主流ではないヘルスケア事業出身の山田氏が社長に就任したこと。2つ目は、同社の9つの部門のうち、6つの部門の責任者が新しくなったこと。3つ目は、社長含めた25人の執行役員のうち、50歳以下の役員が10人というように、執行役員の若返りを進めたことである。

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