2011年末には相互運用ガイドライン「P2030」が発行へ、スマートグリッドの国際標準策定が進む:エネルギー技術 スマートグリッド(2/2 ページ)
スマートグリッドの全体像を把握し、導入に向けた今後の展開を読むには、IECや、IEEE、ITU-Tといった国際標準化団体の動向をつかんでおくことが必要だ。
スマートグリッドはさまざまな事業領域のプラットフォーム
IEEEが策定する標準文書には主に、「スタンダード(Standard)」、「勧告(Recommended Practices)」、「ガイド(Guide)」という3つの種類がある。Standardは、必須要件を記述したもの。Recommended Practicesは、実施手順を記述した勧告文書。Guideは、実施には幾つかの代替方法があるため、勧告には至らない指針的文書である。上記の標準文書のうち、IEEE P2030とIEEE P2030.1、IEEE P2030.2はGuide、IEEE P2030.3はStandardに位置付けられている。
井上氏は、IEEE P2030規格をスマートグリッドの「ロゼッタストーン(問題解決につながる重大な鍵)」と表現した。何も存在しないゼロの状態から新たなシステムを組み上げるのは難しい。P2030を出発点にすることで、スマートグリッドの構築を進められるという説明だ。
IECやIEEE、ITU-Tといった国際標準化団体はスマートグリッドの概念モデルとして、NISTが規定したモデルを採用している(図4)。この概念モデルは、スマートグリッドを「マーケット」、「オペレーション」、「サービスプロバイダー」、「発電」、「送電」、「配電」、「顧客」という7つの事業領域に分け、それぞれの領域で想定されるアプリケーションをリスト化したもの。この概念モデルの意義について同氏は、「スマートグリッドを電力インフラとしてではなく、さらに広く捉えている。NISTの概念モデルには、マーケットやサービスプロバイダーが上位概念に入っており、この点は興味深い。スマートグリッドはプラットフォームであり、将来的にはこのプラットフォームの上にさまざまな領域の事業が展開されていくことを示している」と語った。
さらに詳しい情報は、「IEEE P2030」のWebサイトなどを参考にしてほしい。
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