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第34回 温度変化の“相殺”でBand Gap Referenceの特性改善Analog ABC(アナログ技術基礎講座)(1/2 ページ)

第34回は、2つダイオードの端子電圧の差をうまく使うことで、電源電圧の変動に影響を受けない基準電圧を生み出せることを説明しました。今回は、温度変化による電圧変化を相殺するBGRを設計しましょう。

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アナログ技術基礎講座「Analog ABC」一覧

 本連載では第33回から、これまで紹介していなかったアナログ回路として「Band Gap Reference(BGR)」を取り上げています。前回は、2つダイオードの端子電圧の差をうまく使うことで、電源電圧の変動に影響を受けない基準電圧を生み出せることを説明しました。ただ、温度が変化すると基準電圧も変動してしまうという課題が残っていました。BGRは、電圧や温度などが変化しようとも、常に一定の電圧を安定して生成する回路が理想です。そこで今回は、温度変化による電圧変化を相殺するBGRを設計しましょう。

図
図1 前回(第33回)に設計したBand Gap Reference(BGR)回路 2つのダイオードの端子電圧の差をうまく使うことで、電源電圧の変動に影響を受けない基準電圧(VBGR)が得られました。ただ、温度変化によってVBGRが変化するという課題が残っています。

立ち上がり電圧Vfの温度傾斜

 今回は、BGR回路の温度特性を向上させ、前回設計した図1のBGR回路で使用した電圧制御電流源G1を、実際のオペアンプに置き換えます。具体的な説明に入る前に、前回の連載の数式を1つ修正させてください。前回の(8)式に紹介した以下の数式は、Rcの両端に発生する電圧であって、図1に示したVBGRの電圧ではありません。

 

 

 正しくは、Rcの両端に発生する電圧ΔVBGRは(2)式になり、図1のVBGRは(3)式になります。ここで、Vfはダイオードの順方向電圧です。

 それでは、(3)式を使って温度特性を相殺するための条件を求めます。まず、(3)式で、温度によって特性が変化する部分は、ダイオードの順方向電圧Vfと熱電圧Vtです。製造プロセスによって若干の変化はありますが、一般にVfの温度特性は、およそ−2mV/℃です。従って、VBGRの温度特性を相殺するには、ダイオードの順方向電圧Vf以外の部分の温度傾斜を+2mV/℃にすれば良いわけです。

 これまで幾度か出てきましたが、熱電圧Vt=KT/qですので温度の傾斜(微分)は、K/qになります。Kはボルツマン定数、qは素電荷でいずれも定数ですので、K/q=1.3806503×10−23/1.60217646×10−19=86.25×10−6と計算できます。よって、以下のように残りの部分を求めることができます。

図1の回路では、ダイオードの並列数m=15なので、

 RBGR=100Ω、Rc=RBGR×8.563として早速、特性をシミュレーションしてみましょう(図2)。図2を見ると、前回のBRG回路よりも温度特性が改善され、温度変化に対するVBGRの変化が減りました。しかし、まだ十分とはいえません。図2において、真っすぐ一本のラインになるべきVBGRのラインが太くなっています。−2mV/℃と仮定したダイオードの順方向電圧Vfの温度傾斜に少し誤差があったようですので、誤差を解消することを目的に、Rcを調整してみます。

図
図2 回路定数を調整して温度特性を改善した結果 前回の図4(b)に示したVBGR特性に比べて、温度特性が向上しました。VBGRのラインは、横軸が1.2Vを超えた付近から温度変化によらず、ほぼ一本になっています。ただ、わずかにラインが太くなっているので、まだ調整が必要です。

 図3にRc/RBGRをパラメータにしたときのVBGRの温度特性を示しました。Rc/RBGRを、7.3〜7.7の範囲で変えたとき、最もVBGRの温度変化が小さいRc/RBGRを見つけ出します。図3を見ると、Rc/RBGR=7.5に設定することで、温度傾斜の少ないVBGRが得られることが分かります。−40〜85℃の温度範囲でVBGRの変化幅を2mV以下に抑えられそうです。

図
図3  Rc/RBGRをパラメータにしたときのVBGRの温度特性 Rc/RBGR=7.5のときに最もVBGRの変動幅が小さいので、Rc/RBGR=7.5をパラメータとして選びます。

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