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「ばたつく相手でも大丈夫です」、高速負荷応答の非接触充電技術が開発ワイヤレス給電技術

東京大学と慶應義塾大学の研究グループが開発した非接触充電システムを使えば、負荷が変動しているときにも安定して電力を供給できる。2つの送電コイルを使い、それぞれに供給する電圧の位相差を適応制御することで実現した。

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 金属電極を使わずに非接触で電力を供給するワイヤレス給電技術――。電気自動車やモバイル機器といった分野で今後の普及が見込まれているが、まだ解決すべき課題も多い。その1つが、電力を送る相手である負荷の変動に対して、安定的に電力を伝える制御手法だ。

 東京大学と慶應義塾大学の研究グループは、負荷の変動に対して高い応答性を備えたワイヤレス給電(非接触充電)技術を開発し、「Embedded Technology 2011/組込み総合技術展(ET2011)」(2011年11月16〜18日、パシフィコ横浜)でデモを披露した。

完全“フリー”なSSDを目指す

 同研究グループではかねてより、高い信頼性を備えた「ディペンダブル ワイヤレス ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)」の開発を進めてきた。「高い信頼性」にはいろいろな視点があり、例えばメモリの書き換え回数やデータ保持時間を延ばすことや、電源の遮断に対する耐性を確保すること、接触不良や水による破壊を防止することなどがある。

 接触不良や水による破壊を防ぐには、金属端子による接点をすべて無くせばよい。同研究グループはこの観点で、データと電力供給をワイヤレス化したSSDの開発に着手した。ただ、一般的なモバイル機器では二次電池に対して電力を供給すればよいが、SSDには電気を蓄える二次電池は搭載されていない。従って、NAND型フラシュメモリにデータを書き込んだり、読み出したりするときにも、SSDに電力を安定的に供給する必要がある。書き込み/読み出し動作は、電力の供給側から見ると負荷がばたついていることに相当するため、負荷変動に追従して安定して電力を供給する非接触充電技術が必要だった。

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東京大学と慶應義塾大学の研究グループが開発した高速負荷応答の非接触充電システム
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2系統の送電コイルを使うことが鍵 図の下は送電側コイル、上は受電側コイル。送電側には、位置を合わせた2つのコイルを使い、それぞれに供給する電圧の位相を適応的に制御する。これによって、負荷変動に対しても安定した電力を供給できる。

2つの送電コイルの磁界を合成

 開発した非接触充電技術は、電磁誘導という現象を使って電力を送る点は従来と何ら変わらない。2系統の送電コイルを使う点が大きく異なる。

 詳しく説明しよう。まず、負荷の状態(例えば、データ書き込み動作のオン/オフ)によって変動する負荷端の電圧値をモニタリングし、送電側にフィードバックする。このとき、何の工夫も施さない場合は、送電側から供給する電圧も負荷変動に応じてばたついてしまう。そこで送電側では、あらかじめ決めておいた負荷端電圧の目標値(例えば、12V)と実際の電圧を比較し、差があるときは適応的に供給電圧を調整する。具体的には、2系統の送電コイルに供給する電圧の位相差を制御する。

 例えば、供給電圧を高めたいときには位相差を狭め、供給電圧を下げたいときには位相差を広げる。供給電圧が最大になるのは、2つの送電コイルに供給する電圧の位相が一致しているとき、最小になるのは位相が180度ずれているときである。180度ずれているときは、それぞれの電圧が相殺して、コイルの磁界が生成されないことになる。

左は適応制御していないとき、右は適応制御しているとき。下のグラフは負荷がオン/オフしている様子、上のグラフは送電側から負荷に供給する電圧の変動。適応制御することで、供給電圧が安定化していることが分かる。

 電力を送るのに使う周波数は、6.78MHzと高い。送電と受電側のコイル間の距離が1mmのときの総合送電効率は50%、供給電力は1Wである。0.18μmのCMOS製造プロセスで、送電側の制御ICと、受電側の整流ICを設計した。

 上記の研究は、科学技術振興機構(JST)が支援する戦略的創造研究推進事業(CREST)のテーマの1つである「ディペンダブルVLSIシステムの基盤技術 〜ディペンダブル ワイヤレス ソリッド・ステート・ドライブ〜」の一環として実施された。研究代表者は、東京大学大学院工学系研究科の准教授である竹内健氏。共同研究者は、慶應義塾大学理工学部の教授である黒田忠広氏と、同学部の準教授である石黒仁揮氏である。

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開発した非接触充電システムの概略図 2つの送電コイルに印加する電圧の位相差を制御することで、生成される合成磁界の大きさを変化させる。この結果、電磁誘導で送れる電力を調整できる。

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