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「Audi A3」新モデル採用のMOST150、車載イーサネットとの共存も視野にビジネスニュース 業界動向

車載エンターテインメントシステム向けの最新LAN規格であるMOST150が、2012年発売の「Audi A3」に採用されることが明らかになった。MOST150は、BMWやトヨタ自動車が採用を検討している車載イーサネットとの共存も視野に入れている。

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 車載LAN規格であるMOST(Media Oriented Systems Transport)の標準化団体MOST Cooperation(以下、MOSTCO)は2011年11月17日、都内で記者説明会を開き、Audiが2012年に発売する「Audi A3」の新モデルに、MOSTの最新規格であるMOST150が採用されることを明らかにした。MOST150の採用事例はこれが初となる。

 MOSTは、ネットワーク配線をリング状に接続する同期型ネットワークの規格で、カーオーディオやカーマルチメディアシステムなどの車載エンターテインメントシステムの用途に利用されている。MOSTには、MOST25/50/150という3つの規格が存在している。最初に規格化された、帯域幅が25Mビット/秒(Mbps)でプラスチック光ファイバ(POF)を用いてネットワーク接続するMOST25は、欧州の自動車メーカーの車種を中心に広く利用されている。また。2番目に規格化された、帯域幅が50Mbpsでツイストペアケーブルを用いてネットワーク接続するMOST50は、トヨタ自動車やHyundai Motorなどアジア地域の自動車メーカーの車種に採用されている。3番目のMOST150は、帯域幅を150Mbpsと大幅に向上させた規格である。MOST25は、ラジオやCDなどの音声ファイルを扱うことを主な用途としていた。これに対して、MOST150は、動画像やインターネット接続などにも用途を拡大するために、帯域幅の向上を含めて仕様が大幅に拡張されている。

 MOSTCOのアドミニストレータを務めるChristian Thiel氏は、「11年前に発売された『BMW 7シリーズ』に初めて搭載されてから、現在では16社の自動車メーカーの116車種で利用されるなど、情報系の車載LANでは最も浸透している規格だ。また、VolksWagen(VW)グループが、今後は大衆車を含めて全てのブランド、全ての車種にMOSTを適用することを表明しており、搭載車種は今後も増えていくだろう。また、数年前から規格策定を進めてきたMOST150についても、Audi A3をはじめ2012年以降採用が広がっていく見通しだ」と語る。

MOSTCOのChristian Thiel氏VWグループにおけるMOSTの採用ロードマップ 左はMOSTCOのChristian Thiel氏。右は、VWグループにおけるMOSTの採用ロードマップ。一番右端にあるMOST150を採用するブランドの枠には、VWグループではないDaimlerのMercedes Benzのロゴも。

 この他、Thiel氏は、MOST関連の業界動向を3つ挙げた。1つ目は、最近になってBMWやトヨタ自動車が規格策定を進めるなど、注目を集めている車載イーサネット(参考記事)との関係である。同氏は、「MOST150は、イーサネットで扱うTCP/IPなどの通信データを変換することなくそのまま送受信する『イーサネットチャネル』という機能を備えている。この機能により、一般的な民生用機器で利用されているイーサネットから車載イーサネットまで、全てのイーサネットとの連携が可能になっている」と強調する。説明会と併せて行ったMOST150の動作デモでは、MOST150対応のネットワークコントローラICを搭載する機器が、イーサネットチャネル機能によってイーサネットノードとして認識されることを示した。

 2つ目は、MOST150のワイヤーハーネスとして、MOST25で用いられているPOF以外に、銅線である同軸ケーブルも利用できるようになったことだ。先述のデモのワイヤーハーネスはPOFを使用しているが、もう1つのデモでは、SMSCが開発中の専用物理層ICを追加することにより、同軸ケーブルでのMOSTのネットワーク接続を実現していた。SMSCの日本法人であるSMSC Japanは、「同軸ケーブルは、サイドミラーに組み込むカメラとのネットワーク接続など、温度や湿度などの面で周辺環境が厳しく、POFの利用が難しいところでも使える。また、1本のケーブルで送信と受信が可能な上に電力も送れるなどのメリットもある。専用物理層ICの回路規模はかなり小さいので、現行のMOST150用ネットワークコントローラICに集積することは容易だ」と述べている。

イーサネットチャネルのデモPOFと同軸ケーブルを接続した基板 左はMOST150のイーサネットチャネルを用いたデモ。DLNA(Digital Living Network Alliance)サーバやNAS(ネットワーク接続ストレージ)などイーサネットに接続して使用する機器と、MOST150対応のネットワークコントローラICを搭載する機器にそのまま接続できている。右は、POFと同軸ケーブルを接続したMOST150のネットワークノードの基板。基板の左側に接続されているオレンジ色の配線がPOFで、中央部と右側に接続されている黒色の配線が同軸ケーブルである。同軸ケーブルと基板をつなぐコネクタの下側にあるのは専用物理層IC。

 3つ目となるのが、より広い帯域幅を持つ次世代MOSTの方向性だ。次世代MOSTでは、HD(高品位)の映像/音楽データを圧縮/伸張せずにそのまま利用できるように、帯域幅を数Gビット/秒まで高める必要があるとみられている。この帯域幅は、現行のPOFでは実現できないため、ワイヤーハーネスをグラスファイバ(GOF)などに変更することを検討している。

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