28nm APUの発注中止は自然な流れ、 AMDはロードマップ変更を示唆:ビジネスニュース オピニオン
AMDの複数の情報筋によると、同社はロードマップに重大な変更を加える可能性があるという。
複数のオンラインソースが、「AMD(Advanced Micro Devices)は、28nmプロセスを採用したAPU(Accelerated Processing Unit)をGLOBALFOUNDRIESで製造する予定だったが、それを取りやめ、ファウンダリをTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)に変更した」と伝えた(関連ニュース)。AMDの情報筋は、「これに伴い、近日中にロードマップが変更されるとみられる。28nmプロセスの製造スケジュールは当初の予定通りには進められないだろう」との見方を示している。ただし、ファウンダリの変更によって製造スケジュールにも変更が生じるかどうかは、現時点ではまだ確定したわけではない。AMDの情報筋は、「最新のロードマップは、近いうちに発表される」としている。
同人物は、「2012年に28nm APUの製造を開始することを前提に話を進めてはいたが、製造パートナーが確定していたわけではない。GLOBALFOUNDRIESとTSMCは、両社とも、当社にとって強力な製造パートナーである。どのファウンダリを選択するかは、われわれが決めることだ」と述べている。なおAMDは、28nmプロセスを適用したディスクリートGPUについては、全てTSMCで製造している。
AMDの別の情報筋は、EE Timesの取材に対して次のように語った。「製造パートナーが変更されるかもしれないといううわさが流れても、たいして気にならなかった。だが、それに伴うロードマップの変更は、かなり繊細な問題である。こうした情報はまず、金融アナリストに伝えられるとみられている」。
EE Timesは、2011年12月5日に開催される同社のミーティングに、数名のアナリストが招待されているという情報をつかんでいる。
米国の市場調査会社であるIn-Statでアナリストを務めるJim McGregor氏は、「AMDとGLOBALFOUNDRIESの緊張関係が増していることを考えると、AMDが製造パートナーを変更したことは特に驚くようなことではない」と述べる。同氏はさらに、「AMDは2011年になって、歩留まりや生産量の低さや、製造コストの高さなど、GLOBALFOUNDRIESとの間で多くの問題を抱えていた。こうした関係がどちらにとってもよい結果を及ぼさないことは明らかだ」と付け足した。
現在の契約では、AMDは有効な32nmダイにのみGLOBALFOUNDRIESに代金を支払うことになっている。歩留まり率の向上に苦慮するGLOBALFOUNDRIESにとって、この契約は収益の減少を意味するものだった。しかし、この契約の満了する2012年1月1日以降、AMDは再び、ダイの品質にかかわらず、全てのウエハーに対して代金を支払わなければならなくなる。これは、AMDにとって何としても避けたい事態であるはずだ。
McGregor氏は、「28nm APUの発注の中止は、AMDにとっても大きな痛手となるはずだ。AMDは、2012年の大半を通じて競合よりも1世代後れを取ることになり、市場における同社の存在価値が弱まることになる」と述べている。
一方で、AMD側は、これをそれほどの痛手とは思っていないようだ。AMDの情報筋は、「40nmプロセスを適用したPC向けプラットフォーム『Brazos』に引き続き注力することも、そう悪いわけではない。Brazosは、299〜400米ドルの価格帯のノートPC市場で成功している製品だ」と述べている。2011年第3四半期におけるBrazosの出荷数量は、2000万個に上る。
また、同人物は、「Bulldozer」ベースのCPUコアを採用した新APU「Trinity」について、かなり楽観的な見方をしていることを明かした。Trinityは、32nmプロセスを適用した従来のAPU「Llano」の次世代品となるものだ。一方で、Trinityについては消費電力当たりの性能を疑問視する声もある。タブレット端末や低消費電力のノートPCの普及が加速している今、Trinityは“超低消費電力の製品ラインアップ”のカテゴリには属さないのではないかというのである。
なお、GLOBALFOUNDRIESは、「顧客企業がファウンダリ企業を選定する過程や、顧客企業の製品に関して、顧客を差し置いてコメントすることはできない」と述べている。
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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