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“フルデジタル化”でオーディオが変わる、クラリオンが車載向けスピーカーを開発中東京モーターショー2011(2/2 ページ)

車載機器メーカーのクラリオンは現在、フルデジタルスピーカー用信号処理技術「Dnote」に対応した専用LSIを開発中だ。2012年初頭には専用LSIを搭載した評価システムのサンプル出荷を開始する。高音質と低消費電力を両立させたオーディオ再生が可能になるという。

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フルデジタルスピーカーとは何か?

 クラリオンが展示したフルデジタルスピーカーは、動作原理が2008年に発表されたばかりの新しい技術である(関連記事)。アナログ/ミックスドシグナルの半導体回路設計を強みとするベンチャー企業のTrigence Semiconductorが考案した。

 フルデジタルスピーカーには、一般的なスピーカーと異なり、複数のコイルが必要である。オーディオ信号の振幅の大小に合わせて、通電するコイル数を高速に増減し、音を空間に放射する仕組みだ。それぞれのコイルは、(1)通電している、(2)通電していないという2つの状態だけを採る。通電している状態が「オン」、通電していない状態が「オフ」と考えると、デジタル的に動作していることになり、これがフルデジタルスピーカーと呼ぶゆえんである。その時々のオーディオ信号に必要なだけの電力消費だけで済むため、アナログ信号でコイルを駆動する従来のスピーカーに比べて消費電力を大幅に削減できる。

図
フルデジタルスピーカーのイメージ図 スマートフォンや携帯型オーディオ機器のデジタル出力を、アナログ信号に変換することなくスピーカーに入力する。スピーカーがD-A変換器として動作し、空間に音を放射する。

 ただ、フルデジタルスピーカーを使って「聞ける音」を出すには、入力するデジタル信号を工夫する必要がある。具体的には、コイル間の特性の相違を補償する信号処理が必要で、デジタルオーディオ信号を「マルチビットΔΣ型のデジタル変調回路」と「ミスマッチ・フィルタ」で処理した後、フルデジタルスピーカーに入力する。これらの独自処理を「Dnote」と呼ぶ(動作原理については関連記事その1関連記事その2)。

車載に特化した改良を盛り込む

 クラリオンは、Trigence Semiconductorが考案したこのフルデジタルスピーカーの動作原理をIP(Intellectual Property)として入手し、車載用途を想定した独自のスピーカーシステムの開発を進めた。

 特徴は4つある。1つ目は、車載を想定した独自のフルデジタルスピーカーである。6系統のコイルを組み込んでおり、量産性も考慮した作り込みを進めている。2つ目は、独自のデジタル信号伝送技術である。Trigence Semiconductorの専用LSIではS/PDIF(Sony/Philips Digital Interface)を採用していたLSIへの入力インタフェースを、LVDS(Low Voltage Differential Signaling)形式に変更した。

 LVDSを採用しながらも、車載用途に一般的に使われているアナログのオーディオハーネスをそのまま使える仕組みを盛り込んでいるという。「スピーカーの配置やオーディオハーネスといった観点で既存の車載オーディオシステムをそのままに、デジタルスピーカーを導入できるように開発を進めている」(同社)。

図
フルデジタルスピーカーの構造 一般的なダイナミックスピーカーでは1系統のみのコイルを、フルデジタルスピーカーでは複数使う。

 3つ目は、音質を高めるための信号処理技術である。具体的には、圧縮されたオーディオコンテンツを伸長する際の高音質化処理や、フルデジタルスピーカーの特性を引き出す信号処理に独自性があるという。この他、フルデジタルスピーカーの高出力化と高音質化を両立させるために、比較的高い電圧を数十MHzと高速にスイッチングさせる動作を同社の専用LSIに実装している。この点も特徴に挙げた。

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