Broadcomが車載イーサネット製品を説明、「接続コストを最大80%低減可能」:ビジネスニュース 企業動向
Broadcomのイーサネット技術「BroadR-Reach」は、従来技術と比べて車載カメラシステムの接続線のコストを最大80%、重量を最大30%低減できるという。
Broadcomは2011年12月12日、東京都内で記者会見を開き、同社が車載カメラシステム向けに展開しているイーサネット技術「BroadR-Reach」について説明した。BroadR-Reachは、同社やNXP Semiconductors、Freescale Semiconductor、車載機器大手のHarmanが共同で設立した「OPEN Alliance SIG」が策定している車載イーサネットの標準規格のベース技術として採用されている(参考記事)。
Broadcomのインフラストラクチャ&ネットワーキンググループ/PHYでシニア・プロダクトライン・マネージャーを務めるTimothy Lau氏は、「当社はこれまで、ネットワーク機器やインフラ機器で構成されるインフラストラクチャ、モバイル機器や無線通信機器などの端末関連、セットトップボックスやケーブルテレビモデムなどの家庭用という3つの市場を対象に事業を展開してきた。これらに加わる新たな製品市場として期待しているのが、BroadR-Reachをベースとする車載イーサネット製品を投入する車載機器である」と語る。
BroadR-Reachは、ネットワークの接続線としてシールド無しのツイストペア(UTP)ケーブルを1本だけ使用する。標準的なイーサネット(IEEE 802.3)が4本のツイストペアケーブルを被覆した接続線を用いるのに比べて、非常に簡素化されている。Lau氏は、「既存の車載カメラシステムはLVDS(低電圧差動信号)で信号を伝送しているため接続線にシールドケーブルを用いていた。BroadR-ReachであればこれをUTPケーブルに置き換えられる。当社の試算によれば、車載カメラシステムのネットワークをLVDSからBroadR-Reachに変更すれば、接続線のコストを最大80%、重量を最大30%削減できる」と強調する。またBroadR-Reachは、通信レイヤーの第1層である物理層(PHY)は専用のPHY ICが必要なことを除き、第2層以上は既存のIEEE 802.3のリソースを利用可能である。
BroadR-Reachの伝送速度は最大100Mビット/秒(Mbps)である。通常、イーサネットの伝送方式はベストエフォートであるため実効速度は低下することが多い。しかし、「BroadR-Reachを用いる車載カメラシステムでは、98M〜99Mbpsという実効速度を確保している」(Lau氏)という。通信可能な接続距離についても100m以上を確保した。同氏は、「ドイツのバスメーカーとの評価作業では、47mの距離をBroadR-Reachで接続したが問題はなかった」と説明する。
また、これまで車載機器にイーサネットが採用されなかった最大の理由であるEMI(電磁干渉)については、専用PHY ICで生成する信号の周波数を50MHz以下に低減することで対処した。なお、IEEE 802.3に用いられる周波数は200MHz以上が一般的である。
現在までにBroadcomが発表したBroadR-Reach対応製品はPHY ICが2品種、スイッチICが3品種である。動作温度範囲はPHY ICが−40〜125℃で、スイッチICが−40〜105℃となっている。現在、車載ICの品質規格であるAEC-Q100の認定を申請中である。
BroadR-Reachは伝送速度が最大100Mbpsであるため、HD(高品位)映像を扱うような車載エンターテインメントシステムでは利用できない。そこでOPEN Alliance SIGは、1Gビット/秒などのより高速の伝送速度を持つ規格の策定に取り組んでいるという。ただし、規格化の目標時期は明らかにしなかった。
Broadcomは、BMWが2013年に市場投入する新型車のサラウンドビューに、BroadR-Reachを用いたPHYとスイッチICが採用されたことを発表している。OPEN Alliance SIGに参加している、Hyundai MotorやJaguar Land RoverといったBMW以外の自動車メーカーも採用に踏み切る可能性は高い。これらの他、トヨタ自動車も車載イーサネットの採用に向けて積極的な活動を開始している。
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