9000億円を目指す、東芝がスマートコミュニティー事業に打ち出す3つの施策:エネルギー技術
スマートグリッドやスマートコミュニティーを次の事業の軸に据える企業は多い。東芝もその1社だ。同社の強みは「総合力」にあるという。スマートコミュニティー事業を次のコア事業とするために、新たな施策を打ち出している。
「スマートコミュニティー事業は、次の中核となる重要な領域。2015年度に現在比約2倍となる9000億円の売上高を目指す」――。東芝は、2011年12月16日に「スマートコミュニティが創る成長戦略」と題した事業戦略説明会を開催し、同社の代表執行役社長の佐々木則夫氏がスマートコミュニティー事業への取り組みを説明した。
現在の同事業の売上高は4000億円である。同社は既に、「調査段階」、「実現可能性調査(フィジビリティスタディ)」、「商用・実証」という各段階のプロジェクトを合わせて20件受注しており、さらに受注プロジェクトを上積みすることで目標の達成を目指す。2015年度のスマートコミュニティー事業の売上高のうちおよそ60%を海外の売り上げで賄うことを目標にする。
クラウド事業基盤の強化など3つの施策
スマートグリッドやスマートコミュニティーを次の事業の軸に据える企業は多い。この中で東芝の強みは、総合力にあるという。「センシング技術やシステムの制御技術、これらをまとめるICT/クラウド技術を有する。他の企業とアライアンスを組むことや企業買収を進めることも視野に入れ、柔軟性を持って事業の強化を進める」(佐々木氏)。
同社は目標の達成を目指し、さまざまな施策を打ち出している。事業戦略説明会では3つ挙げた。まず1つ目は、アライアンスなどを活用したソリューション体制の構築。「Analysis(個別解析)からSynthesis(統合)への事業構造転換」をキーワードに掲げており、個別のシステムを提供するのではなく、個別のシステムを統合し、付加価値を高めたソリューションを提供する体制の構築を進める。
2つ目は、クラウド事業基盤のさらなる強化。スマートコミュニティー事業を展開するには、センシング技術やシステム制御技術を集約するICT/クラウドの重要度が増すからだ。
3つ目は、スマートコミュニティー事業の体制強化である。東芝グループに分散していたICT/クラウドソリューション事業の統合を進める。東芝本体に2012年1月1日付けで400人規模のクラウド・ソリューション事業統括部を新設する他、東芝ソリューションにICT/クラウドにかかわる1000人規模の人員を確保する。
この他、企業買収も進めており、2011年7月にはスマートメーターの製造・販売を手掛けるスイスのLandis + Gyr(ランディス・ギア)を買収した。「情報の発信点、料金課金の要となるスマートメーターがスマートコミュニティー実現の鍵になる」(佐々木氏)と考えており、ランディス・ギアと東芝グループとの協業を進める。
エネルギーコントロール(Energy Control)特選コーナー
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 意識せずともピーク電力大幅カット、富士通研がスマートシティ向け新技術を開発
富士通研究所が開発したピーク電力削減技術は、複数の蓄電池をいわばバッファとして使うことで、ピーク値を抑制する。電力の需要予測と、蓄電池の充電/放電タイミングの最適制御技術を組み合わせることで実現した。 - スマートグリッドの実証実験、横浜市など4地域で開始へ
横浜市、愛知県豊田市、京都府の3自治体、北九州市の4地域で実証実験を進める。北九州市の実験「北九州スマートコミュニティ創造事業」では地域の電力需要に応じて電力料金を変化させるダイナミックプライシングを試験導入し、需要家の行動パターンを調査する。家電機器側の制御とも組み合わせる。 - スマート家電の本格普及を見据え活動、国内企業10社がHEMSアライアンスを発足
HEMSアライアンスでは、実際のHEMSサービスの導入を見据え、複数の企業の機器を1つのHEMS上で動かすための枠組みやガイドラインを策定する。事務局は東京電力。 - 写真で見る「Smart City Week」、電力見える化時計や太陽集光鏡、宅内連携EVなどに注目
2011年10月26〜28日に開催された「Smart City Week 2011」で、来場者の注目を集めた展示をフォトギャラリー形式で紹介。