パナソニックが業界初の統合設計ツールを開発、次世代パワー半導体に最適化:パワー半導体 GaNデバイス
パナソニックが開発した統合設計プラットフォームでは、独自に開発したGaNデバイスモデルを導入したことで高速駆動時の回路特性を正確に評価できるようになった。
パナソニックは、GaN(窒化ガリウム)材料を使ったパワー半導体に対応した統合設計プラットフォームを開発した。回路設計ツール、熱解析ツール、電磁界解析ツールといった、従来は個別に使用していた設計ツールを相互に連携したもの。今後、社内で効果を検証し、実用化に向けた検討を進める。パナソニックは、かねてよりGaNデバイスの開発を進めており、GaN-SBD(ショットキーバリアダイオード)と、ノーマリーオフGaN-HEMT(高電子移動度トランジスタ)のサンプル出荷を始めていた(関連記事)。
「GaNデバイスモデルを搭載した統合設計ツールは業界初。複数のツールを自動的に連携させたことで、GaNデバイスを使ったシステム設計に慣れていない開発者でも容易に作業を進められる」(同社)という。この統合設計プラットフォームの特徴は、以下の3つである。
(1)高精度GaNデバイスモデルを独自に開発
電子がエネルギーの低い準位に捕獲される現象(電子捕獲現象)を解明し、この現象を電気回路網として表現できることを発見した。このアイデアを盛り込んだGaNデバイスモデルをプラットフォームに導入することで、高速駆動時の回路特性を正確に評価できるようになった。
(2)基板配線の寄生成分の抽出と回路への導入を自動化
一般に寄生成分(寄生インダクタンスまたは寄生容量)は、高周波信号をやりとりするときに問題になることが多い。しかし今回は、低周波数で電流量が大きいパワーエレクトロニクス回路の設計でも寄生成分に着目した。基板の配線パターンから寄生成分を算出して等価回路に変換し、プラットフォームに組み込むことで、寄生成分に起因した雑音も考慮できるようになった。
(3)人工知能を使った知識処理により、異なる開発ツールを連携可能なプラットフォームを実現
「オントロジーマッピング」と呼ぶ人工知能の手法を応用した知能処理を活用することで、異なる設計ツールの効率的な連携を実現した。
開発内容の一部は、2011年12月5〜7日に米国ワシントンD.C.で開催された、半導体デバイス技術と半導体プロセス技術の研究開発に関する世界最大の国際会議「IEDM 2011(2011 IEEE International Electron Devices Meeting)」で発表した(関連記事)。
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