LTE移行が後押し、2011年の無線インフラ市場は前年比で9%成長:ビジネスニュース 市場動向
スマートフォンやタブレット端末の普及により、データ通信量は増加の一途をたどっている。各通信キャリアはネットワークのアップグレードに注力しており、これが同市場の成長を促す要因となっているようだ。
米国の市場調査会社であるIHS iSuppliの最新リポートによると、世界の通信キャリアによる無線インフラ機器の設備投資額は、過去2年間の減少および低迷傾向から回復し、上昇に転じる見込みだという。
iSuppliは、2011年における世界無線インフラ機器市場の売上高は、前年比9.1%増となる425億米ドルに達すると予測した。同市場の売上高は、2009年は前年比7.2%減で、2010年は横ばいにとどまっていた。
iSuppliによると、世界の通信キャリアによる無線インフラ機器の設備投資額は、2015年まで1桁台前半の比率で成長するという。また、2015年には、世界モバイルインフラ市場は売上高451億米ドルを超える規模に成長するとみられている。
iSuppliの通信および家電部門でディレクタを務めるJagdish Rebello氏は、「欧米や北アジアの先進諸国から、南米やアフリカ、東アジアの新興国まで、世界のあらゆる地域の通信キャリアが、無線ネットワークをアップグレードするために新たな通信インフラ機器の導入に投資している。世界各地で高速データ通信への需要が高まっているため、深刻な景気後退が続いてはいるものの、2011年以降、無線インフラ機器の売上高は上昇するとみられている。
2011年に無線インフラ市場が拡大した主な要因としては、世界中の通信キャリアが3.5G(世代)/3.75Gネットワークにアップグレードしたことや、欧米や日本、韓国でLTE(Long Term Evolution)への移行が始まったことが挙げられるという。
先進国の通信キャリアは現在、主に3.5G/3.75G/3.9G技術に投資しているが、中には、4GのLTEネットワークを試験的に運用し始めたキャリアや、同ネットワークの整備を完了し、既に商用化を開始しているキャリアもある。
一方、新興国の多くの通信キャリアは、2.5Gネットワークを3.5Gにアップグレードしており、新しいデータ伝送サービスをユーザーに向けて提供しているという。中南米や南アジア、アフリカといった地域の通信キャリアは、世界的な景気低迷に対する免疫を持っておらず、通信インフラへの投資スピードは過去数年間に比べて鈍化している。ただし、データ通信量の増加を受けて、3G/3.5Gネットワークを展開し始めているキャリアもいる。iSuppliは、これらの地域では、今後数年間で3.75G/3.9Gへの移行が進むと予想している。
iSuppliは、こうした移行により、OFDMA(直交周波数分割多元接続)をベースとしたLTEを大規模に導入しなくても、ネットワークの帯域幅の増加に対応することができるとしている。
スマートフォンやノートPC、タブレット端末の普及によりモバイルブロードバンドの利用が急増し、データ通信量が多くなった地域で事業を展開する通信キャリアは、チャネルカードのアップグレードに投資している。また、これらの通信キャリアは、データスループットの高速化に対応するため、3.75G/3.9Gを用いた新たな基地局を選択的に導入している。
一方、先進国の通信キャリアのほとんどは既に3.5Gネットワークを構築しているため、通信ネットワークの利用範囲を拡大するための投資は最低限に抑えられているという。
無線インフラ機器市場は、3.5G/3.7Gネットワーク対応の製品が主流となっているが、LTE対応のものも躍進を遂げている。2009年後半に、欧米、日本、韓国の通信キャリアがLTEの実証実験を開始した。これをきっかけに、「LTEの試験運用や商用化など、何らかの形で2010年末までにLTEを導入する」と発表したモバイルネットワーク事業者は、同年中に約160社にも上った。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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