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太陽電池の効率を66%まで高める手法、“量子影状態”の発見で可能性が開くエネルギー技術 太陽電池

自然エネルギーを利用した発電の注目度が高まる中、米大学の研究チームが太陽光を効率良く電気エネルギーに変換する新たな手法を発表した。太陽電池の変換効率を、従来の2倍に高められる可能性を秘めているという。

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 “quantum shadow-state(量子影状態)”と呼ばれる量子状態の発見によって、太陽電池の変換効率を倍増できる可能性が出てきた。このquantum shadow-stateでは、光電子エネルギー変換で、高エネルギー状態の電子2個が生成されるという。米テキサス大学オースティン校の化学科教授であるXiaoyang Zhu氏が主導する研究チームが発表した。Zhu氏は太陽エネルギー変換のメカニズムを研究しており、科学雑誌「Science」にその最新の成果が掲載された。

 Zhu氏らの研究チームは、有機プラスチック半導体材料であるペンタセンを用いれば、太陽光の光子1個から取り出せる電子の数を倍増できることを発見した。

 Zhu氏は、発表資料の中で、「プラスチック半導体を用いて太陽電池を製造することには大きな利点が幾つかある。その1つはコストが低いことだ。今回の我々の発見に、分子設計や分子合成を組み合わせれば、太陽エネルギー変換における斬新なアプローチを生み出すことができるだろう。太陽電池の効率を、飛躍的に高められる可能性がある」と述べた。

 シリコン(Si)材料を使う既存の太陽電池における理論上の変換効率は、最大でも31%だとされている。太陽電池に当たる光エネルギーのほとんどが、利用可能な電力に変換できる波長ではないからだ。そうしたエネルギーは、熱となって失われてしまう。だが、Zhu氏らの研究チームによると、熱励起したホットエレクトロンのエネルギーを捉えることができれば、太陽光を電力に変換する際の効率を66%まで高められる可能性があるという。

 Zhu氏らの研究チームは既に、半導体ナノ結晶を用いてホットエレクトロンを捉えられることを実証しており、その成果を2010年にSience誌で発表している。ただし同氏は、その手法を実用的な技術に展開するのは非常に難しいと述べている。その主な理由として、通常の太陽光パネルに当たる自然光ではなく、集光した太陽光が必要になるという点を挙げた。

 そこで今回、Zhu氏らの研究チームは代替となる新たな方法を生み出した。ペンタセン中では、光子が1個当たり1つのquantum shadow-stateを作り出す。この状態だと、2個の電子を高い効率で捉えることができ、より多くのエネルギーを生成することが可能だという。

 光子が吸収されると、エキシトン(励起子)を生成する。エキシトンとは、半導体中で、励起状態にある電子とホールの対である。ここで生成されたエキシトンは量子力学的に結合し、マルチエキシトンと呼ばれるquantum shadow-stateを形成する。そしてマルチエキシトンが電子受容体へ転移する際に、2個の電子を効率よく生み出すというメカニズムだ。Zhu氏らの今回の研究では、電子受容体として、60個の炭素原子から成るフラーレンを用いた。研究チームによると、フラーレンを使うことで今回、太陽光を集光させることなく、ペンタセンを利用した太陽電池の変換効率を44%まで高めることができたとしている。

 この研究チームで主導的な役割を担ったのは、Zhu氏の研究グループで博士研究員を務めるWai-lun Chan氏である。また、同じく博士研究員であるManuel Ligge氏、Askat Jailaubekov氏、Loren Kaake氏、Luis Miaja-Avila氏が補助研究員として参加した。

【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】

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