基礎から実証段階へ、実用化の機運高まる電気自動車向けワイヤレス給電:ワイヤレス給電技術(2/3 ページ)
スマートフォンやタブレットPCといったモバイル機器を中心に製品化が続く、ワイヤレス給電技術。まだ先だと見られていた電気自動車への展開が、基礎研究から実証段階へと移りつつある。
ワイヤレス給電の基本技術をライセンス
あまり知られていないものの、Qualcommはワイヤレス給電の研究開発を数年前から進めてきた。自社技術に加え、ニュージーランドのオークランド大学からスピンアウトしたHaloIPTを買収したことで得た特許をライセンス事業の軸にする考えだ。
同社の電気自動車向けワイヤレス給電技術は、既存技術の抱える2つの課題を解決できると主張する。すなわち、送電効率が高く、送電側と受電側の位置合わせの自由度が高いという特徴があるという。「当社は、送電効率と位置合わせの自由度に関して、重要な特許を持っている。システム全体の送電効率は90%に達する」(Gilbert氏)。
送電側と受電側の位置合わせの自由度は、利用者の使い勝手を高める上で重要だ。電気自動車の駐車位置がちょっとずれたときや、車種ごとに車高が異なるときにも、安定した送電効率を実現する必要があるからだ。同社の技術は電磁誘導で電力を送るが、磁束を制御する「マグネティックアライメント」と呼ぶ手法を採用することで、送電側と受電側の位置がずれたときにも、高い送電効率を維持できるようにした。
「Vehicle to Home」の実現にも欠かせない
自動車メーカー各社も、ワイヤレス給電機能を搭載した電気自動車の準備を進めている。2011年12月に開催された「第42回東京モーターショー2011」では、トヨタ自動車、日産自動車、三菱自動車がワイヤレス給電機能を搭載した電気自動車を出品していた。
各社への取材で見えてきたのは、電気自動車への充電の手間を削減し、使い勝手を高めるというだけにとどまらない、別の観点のワイヤレス給電技術の必要性だ。電気自動車は良質かつ大容量の電池を搭載しているため、その活用を狙って宅内エネルギー管理システム(HEMS)と連携させて使うことが想定されている。太陽電池で生み出した電力を電気自動車にためたり、電気料金の低い夜間に電気自動車に電力を蓄え昼間に消費するといった、「Vehicle to Home」という使い方である。
Vehicle to Homeを実現するには、HEMSと電気自動車が常に接続されていることが望ましい。このとき、電気自動車とHEMSの接続を利用者にゆだねるのではなく、ワイヤレス給電技術を使って常に電力をやりとりできる状態にしておく方が、より確実というわけだ。
三菱自動車は、東京モーターショー2011で宅内に置いた電気自動車を展示した(図3)。同社は2011年9月に、ワイヤレス給電技術を手掛ける米国のベンチャー企業であるWiTricityとIHIと協業することを発表していた。展示した電気自動車は、IHIと共同で開発したものである。「位置自由度が高いことが特徴で、送電側と受電側が20cm程度離れたり、20cm程度横にずれても送電効率は低下しない」(三菱自動車の担当者)という。送電効率は、送電側と受電側の電磁的な結合部で90%、システム全体で80〜85%である。
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