ルネサスも車載イーサネットに対応、日立製コーデックでHD映像を低遅延で伝送:カーエレ展/EV・HEV展
ルネサスが車載情報機器向けイーサネットとして注目を集めているEthernet AVBに対応するICの開発を進めている。日立製作所製のH.264コーデックと組み合わせて、フルHDの映像データを低遅延で伝送できる製品を投入する計画だ。
ルネサス エレクトロニクスは、『第4回国際カーエレクトロニクス技術展(カーエレ展)/第3回EV・HEV駆動システム技術展(EV・HEV展)(2012年1月18〜1月20日)において、車載情報機器向けイーサネットとして注目を集めているEthernet AVB(Audio Video Bridging)を介して、フルHDの映像データ(1080i)を低遅延で伝送する技術を紹介した。Ethernet AVB対応ICは、Freescale Semiconductor、Xilinx、Broadcom、Micrel Semiconductorなどが開発を進めている。車載情報機器向けSoC(System on Chip)で最大手のルネサスも追撃態勢に入った。
ルネサスによるEthernet AVBのデモ 左側のディスプレイは、写真左上にあるビデオカメラで撮影した映像をそのまま表示している。右側のディスプレイに表示した映像は、ビデオカメラの映像データを日立製作所のH.264コーデックで圧縮してからEthernet AVBで伝送し、その後同コーデックで伸張したものである。遅延時間はほぼ感じられなかった。
展示デモは以下のような構成になっている。まず、展示スペースに設置したビデオカメラで撮影している1080iの映像データを、日立製作所の横浜研究所が開発したH.264コーデックを実装した変換ボードにより圧縮する。同ボードにより、映像データの帯域幅は、数百Mbps〜数Gbpsから数十Mbpsになる。この圧縮した映像データは、ルネサスが開発中のEthernet AVB対応コントローラを実装したFPGAボードから送信され、BroadcomのEthernet AVB対応スイッチIC(関連記事)を搭載する評価ボードを経由してから、先述の送信用のボードとは別に用意したEthernet AVB対応のFPGAボードで受信する。最後に、受信した映像データを日立製作所のH.264コーデックボードで伸張する。これらのプロセスによる映像表示の遅延時間は50msと短い。「コーデックの低遅延モードを利用した場合の数字だ。通常モードだと遅延時間は300msになる」(ルネサス)という。なお、デモに用いたEthernet AVBの伝送速度は100Mbpsである。
ルネサスは、日立製作所のH.264コーデックとEthernet AVB対応コントローラを集積した車載情報機器向けSoCの開発を進めている。SoC化した場合には、遅延時間を数msまで短縮できる見込みだ。初期の用途は、駐車時に車両の周辺監視を行うサラウンドビューシステムを想定している。また、通常のイーサネット対応ドライバICの量産実績もあることから、Ethernet AVBに対応するドライバICの開発も検討中だ。
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