電力線通信方式のG3-PLCをITUが標準化、仏大手電力がスマートメーターに採用:エネルギー技術 スマートグリッド
G3-PLCは電力線通信(PLC)の方式の1つで、家庭のエネルギー管理システムと分電盤の間や、電力網側のデータ集約機と家庭の電力メーターの間をつなぐ用途に向けたものだ。同方式の普及に取り組む業界団体は、ITUの標準規格として承認を受けたことで導入に弾みがつくと期待を寄せている。
ITU(国際電気通信連合)は、業界団体「G3-PLC Alliance」が推進する電力線通信方式である「G3-PLC」を、スマートグリッドの構築に向けた狭帯域電力線通信(Narrow Band Power Line Communication:NB-PLC)の新たな標準規格として2011年12月下旬に承認した。同方式の開発元である大手アナログ半導体ベンダーのMaxim Integrated Productsが、2012年1月26日(米国時間)に発表した。「G3-PLCの仕様が今回、オープンな国際規格として標準化されたことで、世界各国の電力会社がG3-PLCを導入するための必要条件が整った」(同社のExecutive Business Manager, Power Line Communications, Signal Processing & Conversion Business Unitを務めるScot Robertson氏)。
G3-PLCは、もともとはMaximが2009年に開発した電力線通信技術だが、現在は2011年10月に設立された業界団体のG3-PLC Allianceがオープンな標準規格として管理している。同団体にはMaximの他、同じく半導体ベンダーのTexas InstrumentsとST Microelectronicsや、電力会社であるフランスのERDF(Electricité Réseau Distribution France)、通信機器メーカーであるフランスのSagemcomや米国のCisco Systemsなど、合計12社が参加する。
Maximによると、G3-PLCの技術的な特徴としては、コスト効率とデータ通信の堅牢性が高い点が挙げられる。堅牢性については、マルチキャリアのOFDM(直交周波数分割多重方式)を採用し、最大300kビット/秒のデータ伝送速度を確保した上、2階層のFEC(前方誤り訂正)を組み込むことなどで、高い耐雑音性を実現したという。さらに、IPv6のインターネットプロトコルをサポートするとともに、AES 128の暗号アルゴリズムを用いることで高いセキュリティを確保した。
コスト効率の観点では、中電圧/低電圧の柱上変圧器を間に挟む通信経路でもデータを送受信できるという点を訴求する。例えば、家庭から見て柱上変圧器の外側(電力網側)に設置したデータ集約機(コンセントレータ)と、家庭内の高機能電力計(スマートメーター)との間に中継を挟まなくてもデータをやりとりできる。必要なコンセントレータの数を減らせるので、導入コストを大幅に削減できるという。
国内の電力会社も導入を検討中
G3-PLC方式のデータ通信を機器に組み込むには、半導体ベンダー各社が提供するチップセットを使う。例えばMaximは2011年にPLCモデムIC「MAX2992」とアナログフロントエンドIC「MAX2991」を投入しており、「既に複数の機器メーカーがこのチップセットを採用し、G3-PLC方式に基づくITU互換の製品を提供している。例えば、フランスの電力会社であるERDF(Electricité Réseau Distribution France)は3500万個の電力メーターをG3-PLC対応品に置き換えると明言しており、発注を受けた欧州のメーカーが既に製造に着手している」(同社のRobertson氏)という。
さらに国内でも、同社が複数の電力会社それぞれと共同で実証試験を実施中で、「ある電力会社は、スマートメーターからHEMS(Home Energy Management System)ゲートウェイにデータを送る双方向の通信方式として、G3-PLCが有効だと考えている」(マキシム・ジャパン 第4営業部 マネージャーの工藤一彦氏)と話す。
ただしG3-PLCに対応する通信チップは、Maximの他にもG3-PLC Allianceに参加する他の半導体ベンダーも製品化している。そうした他社品に対する優位性としてMaximは、「他社に先駆けてシステムLSI化した高機能集積品を提供中だ。さらに、そのチップに組み込んだA-D変換器の線形性が他社品よりも高く、物理層の感度が高い。誤り耐性に優れており、実際にユーザー企業と実施したフィールド試験でも高い評価を得ている」(Robertson氏)と主張した。
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