宅内有線ネットの大統一規格「G.hn」、対応通信チップが日本初公開:ET2011 有線通信技術(3/3 ページ)
ホームネットワークを巡る規格の乱立は、これで終止符か。同軸ケーブル、電力線、電話線という3つのケーブルのどれでもデータをやりとりできる国際標準規格「G.hn」に対応した通信チップが、ようやくお目見えした。
スマートメーターやHEMS向けの低速PLCの展示も
この他、電力線を使った通信に特化したPLC用チップの展示も幾つかあった。パナソニックは、450MHz帯を使う低速PLC用LSI「MN101EF69D」を展示した。BPSK変調を採用しており、データ伝送速度は最大500kビット/秒、実効速度は300kビット/秒程度である。
同社は、日本国内で高速PLCが解禁された2006年から、2〜30MHz帯を使い、最大210Mビット/秒のデータ伝送速度を実現した高速PLC用モジュールを製品化してきた。2007年7月には、独自の高速PLC技術の普及を目的にした業界団体であるHD-PLC Allianceを設立し、活動を主導してきた。ただ、最近注目が集まる宅内エネルギー管理システム(HEMS)やスマートメーターの用途では、高速PLC用チップはオーバースペックであるため、これらの用途に仕様を合わせた品種を用意した。現在開発中で、2012年春にサンプル出荷を始める予定である。
ルネサス エレクトロニクスは、「G3-PLC」や「PRIME」といった複数の規格に対応可能なPLC通信用モジュールを出品した。G3-PLCは、フランスの電力会社EDF(Electricitede France)の子会社であるERDF(ElectriciteReseau Distribution France)とMaxim Integrated Productsが共同で開発した規格。PRIMEは、スペインの電力会社IBERDROLAとスペインの半導体ベンダーであるADD Semiconductorが開発した規格である。
従来、異なる規格に対応するのには、それぞれに合わせた通信チップが必要だった。これに対して、ルネサス エレクトロニクのPLCモジュールを使えば、1つの通信チップで、異なる規格に対応できる。具体的には、物理層処理を担当するDSPと、MAC層処理を担当するMCUを1チップ化したLSIを搭載しており、これに実装するファームウェアを変えることで実現する(関連記事)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 3つの伝送媒体に対応する宅内有線ネット規格「G.hn」、ITUが物理層規格を承認
ITU-T(国際電気通信連合標準化部門)は2008年12月12日、宅内有線ネットワーク規格でこれまで保留状態となっていた「G.hn」について、主要部分となる「G.9960」を発表した。 - テレビはコミュニケーションデバイスへ、ホームネットワークが2012年に迎える新たな変化
PCが製品化された当初、PCを単独で使うのが一般的な利用方法だったが、その後PCはネットワークに接続して使うコミュニケーションデバイスへと変革した。テレビやデジタル家電も、同じ道をたどる。宅内ネットワークの業界団体「MoCA」向けLSIを手掛けるEntropic CommunicationのPresident兼CEOのPatrick Henry氏はこう語る。 - 継続的な節電への第1歩、「電力見える化」いよいよ実用化へ
オフィスや家庭といった日々の生活シーンで、節電に取り組もうという機運が高まっている。継続的な節電に貢献するのが、「消費電力の見える化」や、「宅内エネルギー管理システム(HEMS:Home Energy Management System)」による機器制御の仕組みである。 - 新高速インタフェース「Thunderbolt」についてよくある10の質問
インテルとアップルによる「Thunderbolt」の発表により、PC業界や民生機器業界に衝撃が走った。しかしThunderboltについては、まだ数多くの疑問が残されている。よくある質問をまとめた。