LTEスマホを150〜300ドルの価格帯へ、ルネサスが新プラットフォーム発表:無線通信技術 LTE
LTE/HSPA+/EDGEの3つの規格に対応するトリプルモードのモデム回路と、アプリケーションプロセッサを同社としては初めて1個のチップに統合した。これにRFトランシーバやパワーマネジメント、オーディオ処理を担うチップを組み合わせ、ソフトウェアを含むプラットフォームとして機器メーカーに提供する。
ルネサス エレクトロニクスと同社子会社のルネサス モバイルは、スマートフォンに向けた新型の半導体プラットフォーム「MP5232」を製品化した。LTEとHSPA+、EDGEの3つの携帯電話規格に対応する、トリプルモードのモデムを採用する。このトリプルモードのモデムとアプリケーションプロセッサをルネサスとしては初めて1個のチップに統合し、そのチップ(同社はシングルチップLTEコミュニケーションプロセッサと呼ぶ)を中核に構築した(図1)。2012年2月15日に発表した(両社の報道発表資料)。
ルネサスによると、このプラットフォームは高い性能と拡張性を備えており、スマートフォンを携帯機器のボリュームゾーンである150〜300米ドルの価格帯で実現できるようになるという。同社は報道発表資料の中で、「市場には600米ドル以上のLTE対応のスマートフォンが多数、投入され始めている。しかし、LTEをビジネスとして成り立たせるためには、業界全体でLTE対応機器をもっと浸透させる必要がある」と述べている。
新型プラットフォームは、ルネサスのLTE対応プラットフォームで既に量産中の第1世代品「MP5225」と高い互換性を確保した。さらに次の2つの特徴を備えることで、「LTE/HSPA+対応のスマートフォンや、タブレット、その他のモバイルインターネット機器において、LTEの能力を最大限に引き出しながら、設計期間の短縮化に貢献できる」(同社)という。
第1の特徴は、高い実装性と高い性能を兼ね備えている点だ。「これまでに20億台以上の機器に採用実績がある」(同社)というルネサス モバイル製モデムを搭載しており、LTEカテゴリー3において最大100Mビット/秒と「業界最高レベル」(同社)のスループットを達成するとともに、消費電力を低く抑えつつ、マルチモードのLTE(FDDとTDDの両方に対応)カテゴリー4を実現した。加えて、ルネサス モバイル製アプリケーションプロセッサ「R-Mobile APE5R」のデュアルコアCPUを引き継ぐとともに、動作周波数を1.2GHzから1.5GHzに高めることで、高いグラフィックス性能を確保している。さらにRFトランシーバICやパワーマネジメントIC、オーディオ処理ICもとりそろえて供給する。
第2の特徴としては、「十分な検証と認証を行った上で提供する」(同社)ことで、機器メーカーはLTE/HSPA+に対応する次世代の高機能スマートフォンを「6〜9カ月といった短期間で製品化することが可能になる」(同社)という点を挙げている。
ルネサスは、この新プラットフォームを利用する機器メーカーに向けて、ハードウェア(半導体チップ群)とソフトウェアに加え、各種ドキュメントやリファレンスデザインを提供する。シングルチップLTEコミュニケーションプロセッサについては、28nm世代の半導体製造プロセスを適用し、2012年第3四半期に量産を開始する予定だ。なお、このプラットフォームの価格については未定としている。
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