「環境発電って使える? 使えない?」、開発動向の今を追う:エネルギー技術 エネルギーハーベスティング(2/3 ページ)
われわれの周囲にある、普段意識されていないエネルギー源を有効活用する「環境発電技術」。照明制御や空調制御といったビルオートメーションや、構造物/工場のヘルスモニタリング、ワイヤレスセンサーネットワークといった用途に有効だと期待されているが、日本ではほとんど使われていない。それはなぜか? 現状をまとめた。
Micropelt―半導体プロセスで熱電変換素子を製造
まず紹介するのは、Micropeltの取り組みである。同社はドイツに本社を構えるベンチャー企業で、Infineon TechnologiesやFraunhofer(フラウンフォーファー)研究所の技術者によって2006年に設立された。
Micropeltの熱電変換素子の特徴は、半導体プロセスで製造すること。1つ1つ個別に製造するバルク状素子に比べて、主に2つの利点があるという。1つ目は、出力電圧を高められること。1℃の温度差でバルク状素子だと20mVの出力であるのに対して、Micropeltの素子は100mVの出力が得られる。出力電力量は、温度差が10℃のとき50〜100μW、温度差が70〜80℃のとき10mW程度である(3.3mm×4.2mmの熱電変換素子を使ったとき)。
熱電変換素子を作り込んだ半導体ウェハー 「EU Gateway Programme」の一環で2月8日に東京都内で開催された「環境・エネルギー関連技術を対象とした展示商談会」にMicropeltが出品したもの。写真のウエハーの右上にある小型基板は、熱電変換素子を基板に実装した「TPG651/TPG751」である。
もう1つの利点は、機械的な工程が減り、製造コストが下げられることに加えて、1つのウエハーから大量の熱電変換素子を製造できるため、部品コストを大幅に下げられる可能性があることだ。これまでは、Fraunhoferの研究用設備を使っていたが、2011年6月に大量生産に対応した自社生産拠点の稼働をスタートさせた。これによって、部品コストの低減が現実的なものになった。現在、量産出荷に向けた確認作業を進めており、2012年第4四半期には量産出荷を始める予定だという。「2015年までに、出荷数量を年間500〜1000万個に高めることを目指す」(MicropeltのWladimir Punt氏)。
狙う用途は、ワイヤレスセンサーネットワークや、M2M(Machine to Machine)ネットワーク、リモートモニタリングと幅広い。まずは、ビルオートメーションや工場のヘルスモニタリングの用途で提案する。空調や暖房の配管、工場の配管やモーターの熱をエネルギー源として使うことを想定している。
同社が現在サンプルを提供しているのは、熱電変換素子を基板に実装した「TPG651/TPG751」と、熱電変換素子にDC-DCコンバータや放熱板、無線通信用基板を組み合わせた評価モジュール「TE-CORE」である。TPG651/TPG751のサンプル価格は6000円程度で、量産時の価格の目安は500円程度だという。TE-COREのサンプル価格は2万円である。東京エレクトロンデバイスが2012年1月にMicropeltと代理店契約を結び、日本国内における窓口になっている(ニュースリリース)。
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