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「あらゆる条件下で業界最小」、超低消費電力のFRAMマイコンが登場プロセッサ/マイコン

低消費電力マイコンとして知られる「MSP430シリーズ」に、消費電力を一段と引き下げた製品群が登場する。「Wolverine」と呼ぶ、FRAMマイコンの新たな製品プラットフォームを適用した品種で、第1弾のサンプル出荷を2012年6月に始める。

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 日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)は2012年2月29日、同社の低消費電力マイコン「MSP430シリーズ」の新たな製品群「Wolverine(ウルヴァリン)」を発表した。第1弾となる「MSP430FR58xx」のサンプル出荷を2012年6月に始める予定である。

 Wolverineの最大の特徴は、消費電力の低さを売りにしたMSP430シリーズにおいて、さらにもう一段、消費電力の削減を進めたこと。消費電流は、リアルタイムクロック(RTC)モード時に360nA、アクティブ時に100μA/MHz未満と小さい。MSP430シリーズの中でも高い電力効率が特徴だった「MSP430F2xx」の消費電流はRTC時に800nA、アクティブ時に260μA/MHzだったので、電源電圧が同じときの消費電力を既存品種に比べて半分以下に削減したことになる。「待機時、動作時、周辺回路稼働時といった全ての使用条件下で、消費電力は業界最小」(同社)と主張する。

 不揮発性と高速書き込み、低消費電力を兼ね備えたFRAM(強誘電体メモリ)を搭載したことや、FRAM搭載マイコン向けの130nm世代の製造プロセスを刷新することで実現した。

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日本テキサス・インスツルメンツの井崎武士氏 同社営業・技術本部 マーケティング統括部 組み込みプロセッサ・コネクティビティマーケティング MCUチームのマネージャを務めている。

 Wolverineの主な用途は、電池駆動の機器や無線通信機能を搭載した機器などである。例えば、各種センサーを使ったビルオートメーションや、産業機器の状況モニタリング、携帯型の医療機器、ヘルスケア用品、スポーツ用品など。高速に書き換え可能で不揮発という特徴を有するFRAMを搭載しているため、センサーを使ったデータロギングや無線によるソフトウェアアップーデートといった機能を搭載する機器にも適している。「電池駆動のアプリケーションを中心に、より低消費電力のマイコンを求める声が非常に強い。膨大な数の電池が毎年廃棄されているということが社会問題化していることや、電池駆動の機器のメンテナンスの手間を抑えたいという要望が市場にある」(同社)という。

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Wolverine製品群の第1弾となる「MSP430FR58xx」の位置付け 図の左下のFRAMマイコンに位置付けられる。MSP430FR58xxは、同社としてFRAMをマイコンに初めて採用した「MSP430FR57xx」の後継品である。
左は、Texas Instrumentsのマイコン/プロセッサの全ての製品シリーズ。右は、MSP430シリーズの特徴をまとめたもの。

左は、フラッシュメモリやEEPROM、SRAMと比べたときのFRAMの強みをまとめた表。右は、FRAMマイコンに適したアプリケーションの例である。

低消費電力マイコンが新市場を開拓

 日本TIの親会社である米国のTexas Instrumentsはマイコン事業の強化を続けており、年間売上高を2012〜2013年までに2010年の2倍に相当する20億米ドルまで伸ばすという目標を掲げている(関連記事TIがマイコン事業の拡大を加速、「売上高を2013年までに倍増」)。

 同社は、MSP430シリーズの他、ARMのプロセッサコア「Cortex-Mシリーズ」を搭載する汎用マイコン「Stellarisシリーズ」や、DSPをベースに開発した32ビットプロセッサコア「C28x」を搭載する「C2000シリーズ」、リアルタイム処理に最適化したARMプロセッサコア「Cortex-Rシリーズ」を搭載する「Hercules(ヘラクレス)シリーズ」と、多様なマイコンラインアップを有する。これらの中で、MSP430シリーズは、先に述べた目標を達成する上で重要な役割を担っている。2010年におけるマイコン事業に占めるMSP430シリーズの売上高割合が約50%と高いことに加え、今後の市場拡大が見込めるためである。

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マイコン | 消費電力 | FeRAM | FRAM | Texas Instruments


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