第3世代iPadのコストは16G機で310ドル、Appleのもうけは従来機より低下:ビジネスニュース アナリストリポート
技術情報サービスを手掛けるUBM TechInsightsの推定によると、Appleが先週発表した新型iPadは、部品コストが従来機に比べて上昇しており、1台当たりの利益率は低下しているとみられる。具体的には、実機の分解調査前の見積もりだが、16GバイトのLTE機で310米ドルと推定されている。
UBM TechInsightsによると、Appleが2012年3月7日に発表したタブレット「iPad」の第3世代機は、従来機種に比べて粗利益率が低くなる見込みだという。また、第2世代機「iPad 2」の値下げも実施されることから、Appleのタブレット製品全体の利益率もわずかながら下落する見通しだ。なおUBM TechInsightsは、EE Times誌と同じくUnited Business Media傘下の技術情報サービス企業である。
UBM TechInsightsは、第3世代機の1台当たりの部品コスト(BOM)を、310米ドルと見積もった。記憶容量が16Gバイトのモデルで見ると、初代iPadの部品コストは同タイプで270.86米ドル、iPad 2は同276.27米ドルだったことから、第3世代機で部品コストは上昇することになる。Appleは、これら3つのiPadの発売時の価格を全て同じ629米ドルに設定しているため、初代および第2世代の粗利益率が56〜57%だったのに対し、第3世代機では約5ポイント減の51%になる見込みだという。
歴代「iPad」の主な仕様 第3世代機については、Appleが公式に発表している仕様以外は、実機の分解調査前の段階における早期の予測である。(クリックで画像を拡大) 出典:UBM TechInsights
iPad 2は、今回の第3世代機の発表に伴って販売価格が529米ドルに値下げされるため、単純計算すると粗利益率は53%に下落する計算になる。ただしiPad 2は、2011年の発売以来、部品価格が下がると予測されてきた。そして現在、2012年におけるiPad 2の部品コストは248.07米ドルと推定されることから、利益率の観点でAppleにそれほど大きな影響は無いとみられる。
UBM TechInsightsによると、第3世代iPadの部品コストの上昇は、4つの主要部品に起因するという。1つ目は、Appleがタブレットに新たに採用した高精細ディスプレイ「Retina Display」で、コストは12米ドル以上とみられる。2つ目は同社の新型アプリケーションプロセッサ「A5X」で約8米ドル。3つ目はLTEモデム、4つ目は大容量バッテリーで、それぞれ約7米ドルと見積もられている。
ただしUBM TechInsightsは、今回の部品コストの見積もり値はまだ予測段階に過ぎないため、第3世代機の発売後に実機を分解して調査し、さらに精度の高い推定をリポートするとしている。
UBM TechInsightsでシニアアナリストを務めるJeff Brown氏は、「iPadの第3世代機は、LTEや高精細ディスプレイ、カメラ、大容量バッテリー、高速プロセッサなど、高コストの部品を追加搭載していることから、Appleの最終的な利益率はわずかに下がるだろう。Appleは、この新型iPadで利益率が低下しても、iPad 2の利益率の改善が進んでいることで相殺できると期待しているようだ」と述べている。
さらに同氏は、「またAppleは、携帯電話事業者との間でサービスプランの値下げを交渉することにより、不足した利益を埋め合わせられる可能性もある」と付け加えた。
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