ビッグデータ時代の到来を支援、IBMが1Tビット/秒の光通信デバイスを開発:実装技術
IBMの「Holey Optochip」は、ビッグデータ時代の到来に向け、高速データ伝送の実現を目指して開発された並列光トランシーバデバイスだ。試作品のデータ伝送速度は1Tビット/秒と高く、1ビット当たりエネルギー伝送効率は業界最高だという。
IBMの研究チームは、1Tビット/秒という高速のデータ伝送を実現できる可能性を秘めた並列光トランシーバデバイス「Holey Optochip」を試作した。米国カリフォルニア州で、2012年3月6〜8日の会期で開催された光通信関連の技術会議「Optical Fiber Communication Conference」で発表された。
Holey Optochipは、標準的な90nmプロセスで製造したCMOSチップの裏面に48個の穴を開け、レシーバチャネルとトランスミッタチャネルを24個ずつ接続した構成を採る(図1、図2)。波長が850nmの24個の面発光型半導体レーザー(VCSEL)と、24個のフォトダイオードがフリップチップ方式でチップに直接接続されている。光通信用の貫通ビアは、CMOSウエハーの後工程に段階で形成する。Holey Optochipは、マイクロレンズ光システムを介して、48チャネルのマルチモードの光ファイバーアレイに直結するように設計されているため、従来のパッケージング工程がそのまま使えるという。
IBMは、「Holey Optochipの消費電力は5W以下と低く、1ビット当たりエネルギー伝送効率は業界最高だ」と主張している。もともと並列光トランシーバ技術は、伝送距離が150m未満と比較的短い近距離の高速ファイバー通信向けに開発されてきた。現在、同技術はクラウドコンピューティングを活用した次世代データセンターで使われることが期待されている。
IBMの研究者であるClint Schow氏は発表資料の中で、「Holey Optochipを使えば、1Tビット/秒のデータ伝送速度を実現できる。これにより、当社は『ビッグデータ時代の到来に向け、高速のデータ伝送を実現するトランシーバICを開発する』というマイルストーンを達成できた。今後は、製造パートナーと協力して同技術を改善し、10年以内の商用化を目指したい」と述べている。
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