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いよいよSiCの時代へ、業界初の「フルSiCパワーモジュール」が量産パワー半導体 SiCデバイス

ロームは、パワーモジュールを構成するパワーMOSFETとショットキーバリアダイオード(SBD)に全てSiC材料を採用した品種の量産を開始する。独自の信頼性向上技術を開発することで量産体制を確立した。

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 ロームは、内蔵する全てのパワー半導体素子の材料にSiC(シリコンカーバイド)を採用した「フルSiCパワーモジュール」の量産を開始すると発表した。「フルSiCパワーモジュールの量産は業界初」(同社)という。

 今回量産を開始する品種の定格電圧は1200V、定格電流は100A。外形寸法は122×46×17mmである(端子を含まない)。既存のSi(シリコン)製IGBTモジュールを採用する場合に比べてスイッチング損失を85%削減した他、定格電流400AのSiのIGBTモジュールに比べて体積を50%に抑えられたという(図1)。「定格電流は100Aだが、100kHz以上の高速スイッチングと低損失化によって、定格電流が200〜400AのSi製IGBTモジュールを置き換えられる」(同社)。

図1 SiC材料を採用するメリット (クリックで拡大)

 対象とする用途は、産業機器や太陽電池、電気自動車などにおいて電力変換を担うインバータやコンバータなど。同社は今後、フルSiCパワーモジュールの拡充を進め、2011年度に17億円だったSiC関連事業の売上高を、2012年度には35億円、2013年度には50億円、2015年度には160億円に伸ばすことを目標にしている。例えば、定格電圧を1700V、定格電流を300Aに高めた品種や、SiC材料のトレンチMOSFET、インテリジェントフルSiCモジュールなどを製品化する計画である(図2)。

図2 ロームが狙う用途と今後の製品計画 (クリックで拡大)

独自の信頼性向上技術を開発

 ここ数年、パワーエレクトロニクスの分野では、Siデバイスよりも電力変換時の損失が小さく、材料物性に優れたSiCデバイスに注目が集まっている(図3)。バンドギャップが広く絶縁破壊電界強度が高いため、従来のSiデバイスに比べて耐圧を高められる。耐圧を従来と同等にする場合は、半導体層を薄くできるので、オン抵抗(損失)を下げられる。また、熱伝導度が高いため、高温動作が可能で、冷却装置の小型化につながる。

図3 ワイドギャップ半導体であるSiC材料の材料物性

 ロームによると、これまではパワーモジュールを構成するパワーMOSFETとショットキーバリアダイオード(SBD)のうち、SBDだけをSiC材料の品種に置き換えたパワーモジュールは量産されていた(図4)。しかし、全てのデバイスをSiC材料に置き換えたパワーモジュールは信頼性を確保する観点で技術課題が多く、量産には至っていなかったという。

図
図4 従来のSiCパワーモジュールとフルSiCモジュールの違い (クリックで拡大)

 今回ロームは、独自の欠陥抑制技術やスクリーニング技術を開発することで信頼性を確保したことに加えて、製造プロセスにおける1700℃の高温工程を経ても特性を劣化させない手法を開発することで、量産体制の確立に成功した。同社は、2002年にSiC材料のMOSFETの基礎実験に着手して以降、2010年4月にSiC材料のSBD、同年12月にはSiC材料のMOSFETの量産を開始していた(図5)。

図
図5 ロームの研究開発の歴史

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