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市場調査というジグゾーパズルを組み上げよう〜分析/予測から執筆後まで〜エンジニアのための市場調査入門(最終回)(2/4 ページ)

今回は、ヒアリングで集めたさまざまな情報をまとめ、リポートとして作り上げる「分析/予測」、「執筆」、「その後」という工程に話題を移します。市場調査を長年手掛けていた筆者は、「市場調査とはジグゾーパズルのようなもの、手持ちのピース(情報)で全体を推定するには「細かい観察力」と「大胆な洞察力」が要求される」と語ります。

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 当社の市場規模予測は、ある統計的な将来予測モデルに外部要因などの変数を入力して導くような種類の予測とは異なる。われわれは基本的に、各メーカーに対して来年度および再来年度の見込みなどをヒアリングしてそれをベースの数字とする。

 しかし、各メーカーの見通しおよび見込みは、目標や計画、さらには希望的観測であることも多く、この数字を積み上げていくと考えられないような伸び率を示してしまうことも少なくない。こうした場合、われわれは「メーカーの予測数値」と「矢野経済研究所の予測数値」と分けて表現することもある。

 では、「矢野経済研究所の予測数値」をどう算出するか。これも個々のリサーチャーによってノウハウがあると思われるが、私の手法を例にすると、まず基本的な経済成長率や、対象となる市場(製品)のこれまでの伸び率、デバイスや材料であれば採用される製品の伸び率、予測する期間内での想定される外部要因(法規制の変化など)などを押さえた上で、その市場(製品)が「黎明(れいめい)期」か、「揺籃(ようらん)期」か、または「成長期」、「成熟(飽和)期」かなどを位置付ける。特に、成長期の場合はその初期段階なのか、急成長期なのか、成長の最終段階なのかといったことも判断する。

図
写真はイメージです

 予測値はリサーチャー個々によって異なるし、われわれは預言者ではないので、それが当たっているとは限らない。むしろ、外れている方が多いかもしれない。それでも読者および市場関係者の「予測」に対するニーズは根強いものがある。

 その目的は、社内リサーチャーの主観的な視点と判断ではなく、しかるべき調査機関の視点と客観的な判断によるデータが欲しいということなのだが、実は私自身は個人レベルでは「これでよいのかな」と思わないわけではない。ただ、読者や顧客から突っ込みが入れば、それなりの理由を説明できるよう理論武装しているつもりだ。

 なお、われわれのリポートでは省庁関連のデータはできるだけ掲載しないように心掛けている。信頼度の高いデータであることは間違いないだろうが、インターネットを介して無料で閲覧できるようなデータを使用することで、われわれのオリジナルな分析やデータの価値が「薄まって」しまうことを良しとしないからだ。ただし、何かを語る上で必要最小限のデータは引用させていただくこともある。

執筆 〜「フローチャート」で分かりやすく〜

 分析したデータがそろったら、リポートの執筆である。社内でのプレゼンなどではデータのみを使い、文章は必要ないというケースもあろうが、われわれのリポートは文章も多い。前述の通り、データの解析などもしているからだ。

 1冊のリポートを作成するに当たり、あらかじめ章立てを想定する。多くのリポートの基本的な章立ては、「第1章 総論」(業界・市場の全体動向や、市場規模推移、展望や提言など)、「第2章 各論」(製品などカテゴリー別の市場動向)、「第3章 個別企業の動向」といったフォームだが、これに注目分野にスポットを当てた特集記事を組んだりもする。

 私が若いころは、上司から「第1章から書くのだ」と指導されたものだが、頭から順番に書くような人はほとんどいなかったのではないだろうか。取材を伴うという意味において調査リポートと類似点を持つノンフィクション小説などを読むと、確かに頭から書かれていることが理解できるが、それは取材や調査を全て終えた後に筆者が伏線を張りつつ、どこに山場を持ってくるかを計算済みであるからこそで、われわれの発刊するような市場調査リポートにそうした山場は必要ない(ただし、このような手法をまねる場合もある)。そのため、われわれは主に第3章、第2章、第1章という順序で書いていく。

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