IHIが無線充電装置の製造/販売へ、2015年中にもEV向けに製品化:電気自動車 ワイヤレス給電技術
IHIが磁界共鳴方式を用いた無線充電装置の本格的な事業化に乗り出した。無線充電技術ベンチャーのWiTricityとの提携を強化し、2015年中にもEV向けの製品を市場投入する計画である。
IHIは2012年4月25日、磁界共鳴方式を用いた無線充電(ワイヤレス給電)技術のベンチャー企業であるWiTricityとの提携を強化すると発表した。IHIは、今回の提携強化を基に、2015年中にも無線充電装置を市場投入することを目標に事業展開を強化して行く方針である。
IHIとWiTricityは、2011年3月に技術ライセンス契約を結んでいる(関連記事1)。今回の提携強化では、IHIがWiTricityの技術を用いた無線充電装置を製造/販売できるようなIP(知的財産)ライセンス契約を締結した。これによりIHIは、電気自動車(EV)向けや産業用機器向けの無線充電装置事業に本格的に参入することになる。なお、今回のIPライセンス契約は独占的なものではないので、トヨタ自動車とWiTricityの提携(関連記事2)には影響しないという。
IHIは、無線充電装置の受電モジュール、送電モジュールの両方を手掛ける計画だ。2011年9月から三菱自動車と共同開発している、EV用の受電モジュール(関連記事3)や、2012年2月から三井ホームと共同開発している住宅に設置する送電モジュール(関連記事4)が2015年に市場投入する第1弾製品となる可能性が高い。EVに搭載する受電モジュールの価格は、EVの車体価格の10%程度であれば一定の需要が見込めると想定している。
WiTricityの磁界共鳴方式を用いた無線充電技術は、受電モジュールと送電モジュールが20cm程度離れていても3kWの電力を90%の効率で送電できることが特徴。携帯電話機などで普及が始まっている電磁誘導方式の無線充電技術は、受電モジュールと送電モジュールを正確に位置合わせする必要がある。しかし、無線充電を行う駐車場でEVを駐車する際に、EVに搭載した受電モジュールと駐車場の床に設置した送電モジュールの位置を正確に合わせることは難しい。このため、EV向けの無線充電装置としては、磁界共鳴方式が利用しやすいと見られており、IHI以外にもトヨタ自動車や日産自動車も開発を進めている。
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