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超高速タブレットが実現か、「チップ内」光伝送で消費電力も下がるLED/発光デバイス(2/3 ページ)

光を使った有線通信は高速で、電力消費が少ない。光の採用はまず光ファイバー利用の通信インフラ、次に筐体間接続、チップ間接続という順に広がってきた。最後は「チップ内」だ。プロセッサなどさまざまなチップ内で光伝送を利用できれば、タブレットなどのモバイル機器などでも光のメリットを享受できる。東京都市大学の研究チームは光伝送に必要なSi(シリコン)発光デバイスの大幅な改善に成功した。

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全てをCMOS技術で固める

 東京都市大学の研究チームは、全てをCMOS技術で作り込むために必要な発光素子の効率を高めようとしている。必要な技術はGe量子ドットと、Si光共振器だ。研究内容もこの2点に絞り込まれている。「Si基板の上にGe量子ドットをMBE(Molecular Beam Epitaxiy)法で結晶成長させる(図2)。さらにその上にSiで作ったフォトニック結晶の光学共振器を配置することで、光強度を高め、光源として利用できるようにすることが開発の目的だ」(総合研究所シリコンナノ科学研究センター長、工学部教授の丸泉琢也氏)。


図2 Ge量子ドット Si基板上に成長させたもの(図左上)。高さ約10nm、直径100nm程度であり、成長温度を制御することで寸法や形状を制御できる。面密度は1010個/cm2。出典:東京都市大学

 SiとGeを利用する理由はこうだ。GeはSiと同じIV族の半導体であり、CMOS技術への適合度が高い。まず、Si基板の上にGe量子ドットを成長させ、Si-Ge-Siヘテロ構造を作り込む。ここで外部から光を照射すると、Si側に電子が、Ge側にホールが集まる。その後、電子とホールが再結合するとフォトルミネッセンスと呼ばれる現象で発光する。発光スペクトルは1.3〜1.6μm(ピークは1.45μm)であり、チップ内伝送に適した波長(1.55μm)の光を取り出せる可能性がある*2)

*2) 同大学が発光原理を調べるために、外部のレーザー光で励起させた40Kにおける結果を示した。実用化するためには、電流注入による室温での発光の他、高い光強度が必要だ。

 ただし、このままでは波長分布がブロードであり、強度も低く、通信には使えない。そこで共振器を使う。特定の波長だけを強め合わせて、通信に適した波長と強度の光を取り出すためだ。高効率光源を作り上げるには、Ge量子ドットの品質を高めることと、共振器の最適設計の2つが必要になる。

共振器の設計変更で光強度が向上

 共振器もSiで作り込む。屈折率(誘電率)が周期的に変化する微細な構造「フォトニック結晶」を利用した(図3)。


図3 フォトニック結晶を用いた共振器の構造 マイクロリングでは円周方向に光が共振する。マイクロディスクでは円周方向の他、直径方向にも共振する。2次元フォトニック結晶の図には、中央部に縦穴がない「欠陥構造」が見えている。ここに光を閉じ込めてから取り出す。出典:東京都市大学

 まずはレーザー励起ながら室温(300K)での発光を実現した。2010年以降には電流注入による発光にも成功している。2010年にはマイクロディスクと呼ばれる1次元フォトニック結晶で共振器を試作、2011年にはSiに円筒状の縦穴を貫通するように多数配置した2次元フォトニック結晶を共振器として使った(図4)。Ge量子ドットと組み合わせることで、どちらも1.5μm近傍にピークを持つ発光素子として機能した。だが、発光強度が不十分だった。


図4 電流注入型発光素子の構造 左の図では中心の小さな円がマイクロディスクとして機能する。右の図は2011年に試作した構造。中央の緑色の部分がGe量子ドット、その上に2次元フォトニック結晶で作った共振器が載っている。出典:東京都市大学

 これを改善したのが、今回開発した構造だ(図5)。2次元フォトニック結晶を使うという点では2011年のものと同じだが、電流を注入する方向を変えた。従来の試作品では電流を垂直方向に注入していたが、今回は水平方向に変えた。「これによって電流注入効率が大幅に向上した。これまでは素子を試作しやすいことや、構造上効率が高いと予測していたため、垂直構造を選んでいた」(丸泉氏)。


図5 開発した素子構造 横型構造を採る。Si基板上に埋め込みSi酸化膜、その上にGe量子ドットを含むSi層を3層重ねた。p型ドープはホウ素(B)、n型ドープにはヒ素(As)を用いた。中央部はドープされておらず、pinダイオード構造である。白い縦棒は、Siを貫通する縦穴。出典:東京都市大学

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