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超高速タブレットが実現か、「チップ内」光伝送で消費電力も下がるLED/発光デバイス(3/3 ページ)

光を使った有線通信は高速で、電力消費が少ない。光の採用はまず光ファイバー利用の通信インフラ、次に筐体間接続、チップ間接続という順に広がってきた。最後は「チップ内」だ。プロセッサなどさまざまなチップ内で光伝送を利用できれば、タブレットなどのモバイル機器などでも光のメリットを享受できる。東京都市大学の研究チームは光伝送に必要なSi(シリコン)発光デバイスの大幅な改善に成功した。

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優れた発光特性が得られた

 共振器自体の構造についても最適化を進めた。共振器の中央部分に縦穴を持たない欠陥構造(L3構造と呼ぶ)を作り込み、基板に対して鉛直方向に発光が集中するようにした(図6)。これにより室温で、1.35μmと1.4μm付近に鋭い発光スペクトルが得られた。Q値*3)は約500である。

*3) Q値(Quality Factor)とは、共振器の性能指標で、共振の先鋭度を表す。ピークとなる共振周波数を共振器の半値幅で割った値であり、値が大きいほど発振が安定していることを示す。


図6 素子の全体構造と共振器 素子の全体構造(図左)の中央部を拡大し、共振器の欠陥構造を写したところ(図右)。縦穴の周期は420nm。直径は約200nm。中央の欠陥構造は縦穴3個分あり、直線状に並ぶことから「L3構造」と呼ぶ。L3構造の左右の縦穴の直径や中心位置を他の縦穴と変えることで、発光効率の向上と、垂直方向へ放出される光の最適化を施した。縦穴は電子ビームリソグラフィーで加工している。出典:東京都市大学

 さらに、Si基板とSi層に挟まれた埋め込みSi酸化膜をフッ化水素によって除去し、空気層に変えることで、Q値が1560に向上した。「屈折率の変化が大きくなり、光の面内閉じ込めが強くなったためだ。室温で動作するSi系の材料を用いた電流注入型発光素子としては、世界最高水準の結果だと考える」(丸泉氏)(図7)。


図7 高いQ値が得られた 図の上側が埋め込み酸化膜(BOX)を除去した素子の発光スペクトル。出典:東京都市大学

 「一般に電流注入型発光素子では、発光強度を注入電流のm乗という形で表現できる。今回の試作品では、低電流域でm=1.39、電流の量が1mAを超えると、m=1.93となる優れた性質を示した。今回の素子をLEDとして使うことを考えると、今後、Q値を数千から1万程度まで高めることが次の目標となる。量子ドットの位置やサイズの精密な制御*4)によって、mの値を高め、3〜4年で達成したい」(丸泉氏)。具体的にはMBE法ではなく、UHVCVD(Ultrahigh Vacuum Chemical Vapor Deposition)法の採用によって実現できるとした。

*4) この他、Ge量子ドット層を増やすことでも光強度を高められる。


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