Twitter大嫌いな研究員が、覚悟を決めた日:「英語に愛されないエンジニア」のための新行動論 ―番外編―(3/3 ページ)
Twitterなる奇妙なコミュニケーション手段が登場した時、「こんな珍奇な通信手段、一刻も早く消えて無くなってしまえ!」と願ったものです。しかし間違っていたのは、私でした。
「140文字」というすごい発明
さて、第1回の連載でも申し上げたように、私は「人から面白いね」、「楽しいね」と、褒められることだけが好きな狭量(きょうりょう)な人間なのです。ですから、私の個人Webサイト「江端さんのひとりごと」は、訪問していただいた方が、コメントを残せないように設定しています。
理由は明確。ネガティブなコメントをもらうと、私がへこむのです。すごく簡単にへこみます。高慢で尊大な批判エッセイを毎日投稿しているのにもかかわらず、自分に対する批判には、豆腐のような軟弱さなのです。つまり私は、――批判するのは大好きですが、批判されるのは大嫌い――なのです。自分で言うのもなんですが、正直な人間だと思っています。
ご存じの通り、Twitterは140文字以上は記載できないことになっています。これはすごい「発明」だと思います。人類の2大発明である「火」と「車輪」に匹敵するくらい、すごい概念だ、とまで思います。私がTwitterを受け入れることができる、最大の理由はここにあります。なぜなら、「どんなに強烈な批判であっても、140文字以上は記載できない」からです。これはうれしい。すごくうれしい。140文字の批判なら、なんとか耐えられそう。へこむ時間も少なくて済むはず。これなら、私であっても連載を続けていくことができそうです。
これから皆さんは、私のコラムを読んでいただくことで、その浅学で、狭量で、ひきょうな私という人間を看破することでしょう。そして、それに対する正当な批判、批評がインターネット上で飛び交うかもしれません。正直、嫌だなぁ、と思います。しかし、私が、「昔はものを 思はざりけり(権中納言敦忠)」という和歌に対して、「民衆をなめとんのか、このヤロウ」と批判するからには、やはり私も批判を受けなければなりません。
分かりました。私も執筆者として、正面から批判を受け止めましょう。――ただし、140文字以内で――そこのところ、何とぞよろしくお願いいたします。
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Profile
江端智一(えばた ともいち) @Tomoichi_Ebata
日本の大手総合電機メーカーの主任研究員。1991年に入社。「サンマとサバ」を2種類のセンサーだけで判別するという電子レンジの食品自動判別アルゴリズムの発明を皮切りに、エンジン制御からネットワーク監視、無線ネットワーク、屋内GPS、鉄道システムまで幅広い分野の研究開発に携わる。
意外な視点から繰り出される特許発明には定評が高く、特許権に関して強いこだわりを持つ。特に熾烈(しれつ)を極めた海外特許庁との戦いにおいて、審査官を交代させるまで戦い抜いて特許査定を奪取した話は、今なお伝説として「本人」が語り継いでいる。共同研究のために赴任した米国での2年間の生活では、会話の1割の単語だけを拾って残りの9割を推測し、相手の言っている内容を理解しないで会話を強行するという希少な能力を獲得し、凱旋帰国。
私生活においては、辛辣(しんらつ)な切り口で語られるエッセイをWebサイト「江端さんのホームページ」で発表し続け、カルト的なファンから圧倒的な支持を得ている。また週末には、LANを敷設するために自宅の庭に穴を掘り、侵入検知センサーを設置し、24時間体制のホームセキュリティシステムを構築することを趣味としている。このシステムは現在も拡張を続けており、その完成形態は「本人」も知らない。
本連載の内容は、個人の意見および見解であり、所属する組織を代表したものではありません。
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