【ESEC2012】バッファローのMRAMキャッシュ搭載SSD、その実力やいかに!?:メモリ/ストレージ技術 SSD
バッファローメモリがESEC2012でデモを披露しているMRAMキャッシュ搭載SSD。電源が瞬断した後の立ち上がり時間といった特性の他、制御コントローラやMRAMのベンダーが明らかになった。
バッファローメモリは、サンプル提供を開始したばかりのMRAMキャッシュ搭載のSSDのデモを、組み込み機器開発の総合展示会「第15回組込みシステム開発技術展(ESEC2012、2012年5月9日〜11日)」で披露した。
不揮発性という特徴のあるMRAMをキャッシュとして搭載したこのSSDは、電源遮断に対する耐性が高い、起動スピードが高い、待機時や読み込み時の消費電力が低いといった特徴がある。同社のMRAMキャッシュ搭載SSDを5月8日にニュース記事として紹介したところ、EE Times Japan 編集部のTwitterに多くの反響があった。ESECのブース担当者への取材や展示内容から、読者からの主な質問への回答をまとめた。
(1)制御コントローラやMRAMのベンダーはどこか?
まず制御コントローラは、バッファローメモリが自社で開発した。同社の従来の制御コントローラをベースに、複数のMRAMをキャッシュとして使いこなすための改良を施した。現在の品種ではAlteraのFPGA「Cyclone IV」で制御コントローラを実現しているが、2013年第3四半期に量産予定の次の品種ではASIC化する予定である。
次にMRAMのベンダーは、Everspin Technologies。バッファローメモリ自体はこれを公表していないが、展示のSSDのMRAMの品番から判明した。4つのMRAMチップで容量は合計8Mバイト。これをSSDのキャッシュとして使っている。この他、このSSDの基板にはSamsung ElectronicsのNAND型フラッシュメモリや、Silicon Storage Technology(SST)のNOR型フラッシュメモリが実装されていた。
(2)実際の性能(例えば、起動スピード)は、どれぐらいか?
ESECの展示ブースでは、動作中のSSDの電源電圧を瞬間的に遮断するデモを見せていた。DRAMをキャッシュに使った一般的なSSDでは動作が停止(ハングアップ)してしまうような電源状態でも、MRAM利用品では「何事もなかったように動作を続ける」(同社)ことを確認してほしいという。
SSDの起動時間は、DRAMをキャッシュに使った一般的な品種が500msだとすると、MRAM利用品はほぼゼロと見なせる程度だという。消費電流は、書き込み時は既存のSSDとほぼ同じで、読み込み時は動作状況によって異なるが大幅に減らせ、待機時はほぼゼロに落とせるという。
MRAMをキャッシュに使ったSSDを実際に動作させた様子 右下の波形がSSDに供給している電源電圧。瞬間的に電圧がゼロに落ちる状態が繰り返されている。左上の赤いグラフはホスト側からSSDへのアクセスの様子。電源が瞬断した後にもすぐにSSDが立ち上がり、動作を継続していることが分かる。「MRAMキャッシュ搭載SSDの特徴をひと目で見てとれるだろう」(バッファローメモリ)。
(3)量産時の販売価格の目安は?
バッファローメモリの担当者からこのMRAM利用品は「産業用途のSSDなので、提供価格を幾らですと表現するのは難しい」というコメントがあった。単にSSDを販売するだけでなく、ユーザーにはさまざまな技術サポートも含めて提供するからだ。産業用途の中でも特に、社会インフラや重電といった非常に高い信頼性が要求される分野を対象にしているという。
前述の通り、2013年第3四半期には、制御コントローラをASIC化した品種を量産する。SLCタイプとMLCタイプのNAND型フラッシュメモリを使った2シリーズを用意する予定で、SLCタイプの想定容量は最大64Gバイト、MLCタイプの想定容量は最大512Gバイトである。さらに将来的には、SSDの全てのメモリをMRAMに置き換えた「フルMRAM SSD」や、DRAMモジュールの置き換えを狙ったMRAMモジュールの開発も検討しているという。
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