100億個規模のCPUコア市場、ARMが独占状態:ビジネスニュース 企業動向
順調に成長するCPUコア市場では、ARMの独り勝ちが続いている。この状態を打破したいのが、MIPS Technologiesだ。
米国の市場調査会社であるThe Linley Groupが発表した報告書によると、モバイル機器市場の成長にけん引され、2011年におけるCPUコアの出荷数は、2010年から25%増加し、100億個を上回ったという。CPUコアの市場ではARMが78%のシェアを占めている。しかし、DSPやグラフィックスコアなどの比較的規模が小さい市場では、CEVAやImagination Technologiesが優勢だ。
ARMの成功は、同社の最大のライバルであるMIPS Technologiesに影を投げかけている。MIPSは最近、「数件の特許について、売却を検討している」というコメントを発表した。同社はまた、買収パートナーを探しているとも伝えられている。
ARMは2011年に、79億個のチップのロイヤリティを手にした。2011年のチップ1個当たりのロイヤリティは平均4.6米セントで、ARMのロイヤリティ収入は2007年から2011年にかけて年平均19%のペースで増加している。これに対し、同期間の半導体業界全体の売上高の増加率は4%にとどまっている。
一方、MIPS Technologiesが2011年にロイヤリティ収入を得たチップは6億5600万個で、チップ1個当たりのロイヤリティは7米セントだという。CPUコア市場では、SynopsysのCPUコア「ARC」が10%のシェアを獲得している。MIPSはシェア6%で、Synopsysに次ぐ市場第3位に位置する。
Linley Groupは、「業界では、ARMに代わる強力な製品が求められているにもかかわらず、MIPSの経営状態は悪化の一途をたどっている」と伝えている。「MIPSは、新たな顧客企業を獲得できなければ、生き残ることはできない。しかし、破綻もしくは売却の可能性が伝えられる中、同社が新たなライセンシー(ライセンス利用者)を獲得するのは難しい。われわれは、2013年には同市場で何らかの大きな変化が起こるとみている」(Linley Group)。
ARMがシェアをほぼ独占していることで、CPUコア市場はアンバランスな状態になっている。実際に、ある半導体企業の役員は、「中国のモバイル機器向け半導体設計者は、ARMに代わる製品を求めている。ARMのロイヤリティが高いため、Power Architectureコアへの乗り換えを図っている企業もある」と語っている。
Linley Groupのシニアアナリストで、今回発表した報告書の共著者であるJ. Scott Gardner氏によると、MIPSの業績が低迷している要因は研究開発費の不足にもあるという。同氏は、「MIPSは、ARMの次世代アーキテクチャ『ARMv8』に先駆けて64ビットアーキテクチャを発表するチャンスがあったにもかかわらず、その機会を逃した」と述べている。
Linley Groupは今回の報告で、2008年に同社が発表した予測の正当性を立証したことになる。同社は、当時53億個規模だったCPUコア市場が、2012年までに倍増すると予測していた。2011年の成長率は2010年より低かったが、これは2010年の成長率が前年比30%増と高かったためである。
同社は、「2016年には、スマートフォンの成長率が鈍化し、CPUコア市場も成熟に達するだろう。それまでの間は、CPUコア市場は10%の年間成長率を維持する」と予想している。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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