【M2M展2012】ビッグデータが「場」となる、それを有機的に活用するのがM2Mだ:無線通信技術 M2M(1/3 ページ)
「第1回 ワイヤレスM2M展」の特別講演では、東京大学 先端科学技術研究センターの教授で、新世代M2Mコンソーシアムの会長を務める森川博之氏が登壇。M2Mの市場に期待する理由や現在の状況、導入を進める上での課題など、さまざまな視点で熱いメッセージを語った。
さまざまなデバイスや機器が通信によってインターネットサービスと連携する「M2M(Machine to Machine)」。「第1回 ワイヤレスM2M展(2012年5月9〜11日)」の初日には、「未来を支えるビッグデータとM2M」と題した特別講演が開催された。講師は、東京大学 先端科学技術研究センターの教授で、新世代M2Mコンソーシアムの会長を務める森川博之氏である。
同氏は「M2Mへの期待」、「M2Mの可能性」という言葉を何度も使いながら、M2Mに興味を持つ企業/技術者に対する熱いメッセージを語った。同氏の「期待」、「可能性」という言葉を裏付けるかのように、特別講演には2000名を超える参加申し込みがあったという。なぜ今、M2Mの市場に期待すべきなのか、M2Mをいかに捉えるべきか、森川氏の講演をまとめた(関連記事)。
技術が成熟しつつある今こそ、ストーリーを
まず森川氏が紹介したのが、「優れた戦略とは、思わず人に話したくなるような面白いストーリーであるべきだ」という「ストーリーとしての競争戦略(著者:楠木健氏、発行:東洋経済新報社)」の内容紹介である。昭和30年代や昭和40年代のように国内の経済指標や企業の売上高が右肩上がりとなる市場状況では、明確な戦略ストーリーが無くても、国民や社員のやる気を保つことができた。ところが、経済指標や売上高の成長が飽和し、成熟した局面に変わると、国民や社員の士気を保つためには国または企業が今後いかに進むかという戦略ストーリーの重要度が増す。
ストーリーの重要度が増しているのは技術分野でも同じだ、というのが森川氏のメッセージである。かつての時代に比べて技術分野も大幅な革新が難しくなってきた。このような状況になると、「技術を何のために使うのか」を今まで以上にしっかりと考えることが必要になる。
ここで出てくるのが、M2Mである。「『M2Mで社会をより良く変えていこう』というストーリーが、技術を何のために使うのかという問いの1つの答えになる。今ままでは、『どのように実現するか?』ということに研究開発の主眼が置かれていた。これからは、それに加えて『何のために使うのか?』を考えることが必要ではないか」(同氏)。
続けて同氏が「エレクトロニクス/情報通信分野の今後の進み方を考える上で参考になるのでは」という前置きで紹介したのが「意匠建築」の分野である。かつて、建築分野では構造物をいかに建てるかという点に研究開発の主眼が置かれていたが、今では技術を社会にいかに還元するかという視点で、「デザイン」や「芸術との接点」などに研究開発の軸が移っている。
「現代の建築は、どのようなプロセスで新しい作品を作っているのか? 私から見ると『文章力』だ。建物という作品を作るに当たり、その裏にあるストーリーを文章でとうとうと詳しく語るという作業をしている。ITやICTという技術を使ったシステムを『作品』と考えると、このプロセスが参考になるのではないか。つまり、ITやICTのシステムを誰のために、何のために作るのか? ということを、1つのストーリーとして詳しく語ることが、今後の技術開発に求められるのかもしれない」(同氏)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.