明暗分かれる太陽光発電――住宅用は1.4倍に成長、輸出は悪化が続く:ビジネスニュース 業界動向(1/3 ページ)
太陽電池の国内向け出荷量が順調に伸びている。ただし、明暗含みだ。太陽光発電協会(JPEA)が発表した2011年度の数量統計によれば、けん引役は住宅用だ。住宅用は2011年度第4四半期に過去最高の水準に到達した。一方、輸出は3四半期連続で減少。第4四半期は2008年度以来最低の水準に落ち込んでいる。
2012年7月1日に施行される「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」(FIT)を前に、国内の太陽電池の出荷状況はどのように推移しているのだろうか。
太陽光発電協会(JPEA)と光産業技術振興協会は、2012年5月18日、太陽電池の国内出荷統計を発表した。国内企業34社を対象とした統計であり、2011年度(2011年4月〜2012年3月)の太陽電池セルと、セルを集積した形の太陽電池モジュールを対象とする(図1)。
総出荷量(出力kW換算)は、前年度比105.8%の268万5573kW(約2.6GW)に成長した。ここでいう総出荷量は国内生産と輸入、輸出という3項目を合計した数値だ。輸入とは34社が海外で調達し、国内市場に出荷したものを指す。図1では国内生産と輸入を合わせて「国内」と表示している。
図1 国内メーカー34社による太陽電池の出荷量 2011年度(2011年4月〜2012年3月)は過去最高の総出荷量となった。国内出荷(140万4149kW)の用途別では、住宅用が85.9%の120万5900kWを占めた。図中「発電事業用」とあるのは、売電を目的とした最大出力500kW以上のものを指す。ここにはメガソーラーなどが含まれる。JPEAは発電事業用の集計を2011年度から開始したため、前年度との比較はできない。単位はkW。出典:太陽光発電協会(JPEA)、以下同じ
住宅用が国内出荷を引っ張る
国内出荷量は前年度比132.1%の140万4149kW(約1.4GW)と好調であり、2011年の暦年でも初めて1GWを超えた。東日本大震災後の太陽電池に対する国内需要増を反映した形だ。JPEAの統計部会の推定によれば、1.4GWという数値を太陽光発電システム(工事費含む)の国内市場規模に置き換えると、約7600億円(前年度比115.2%)に相当するという。
国内出荷を支えているのが、住宅用だ*1)。国内出荷量に占める住宅用の割合は85.9%(120万5900kW)に上る。特に第4四半期の33万1321kWという数値は四半期の出荷量として最も高い。住宅用は前年度比でも140%に達した。
*1) JPEAの出荷統計では14の分類(系統連系があるものとないもの)ごとに出荷量を集計しているが、住宅用以外に前年度比で出荷量が増えているのは、系統と連系していない非公的施設(産業・事業用)だけである。出荷量は年度計で1376kW(前年度比115.3%)と少ない。
住宅用の勢いを象徴するのが累計設置件数だ。JPEAによれば、2012年4月末までの国内向け住宅用太陽光発電システムの累計設置件数が1994年4月以来、100万件を超えたという(図2)。
図2 住宅用設置件数の推移 住宅用に補助金交付が始まった1994年からの国内向け住宅用太陽光発電システムの件数を示した。2006〜2008年に単年度の数量が伸び悩んでいるのは、住宅用の補助金制度が用意されていなかったことによる。
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