明暗分かれる太陽光発電――住宅用は1.4倍に成長、輸出は悪化が続く:ビジネスニュース 業界動向(3/3 ページ)
太陽電池の国内向け出荷量が順調に伸びている。ただし、明暗含みだ。太陽光発電協会(JPEA)が発表した2011年度の数量統計によれば、けん引役は住宅用だ。住宅用は2011年度第4四半期に過去最高の水準に到達した。一方、輸出は3四半期連続で減少。第4四半期は2008年度以来最低の水準に落ち込んでいる。
Si多結晶の比重低下が止まらない
量産段階に達した太陽電池には、さまざまな方式がある。JPEAは3つの方式、すなわち「Si(シリコン)単結晶」「Si多結晶」「Si薄膜・その他」*3)ごとに出荷量を発表している。絶対値ではSi単結晶とSi多結晶がほぼ拮抗しており、全出荷量の76%(204万9135kW)を占めている(図5)。
*3)「Si単結晶」と「Si多結晶」は、Siの塊を約200μm厚にスライスして製造した太陽電池を含む。一方、「Si薄膜」は微結晶SiやアモルファスSiなどの薄膜(厚さ数百nm程度)をプラズマCVD法などを用いて基板上に形成したものが入る。「その他」には、化合物半導体を用いた太陽電池が含まれる。銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)を用いたCIS/CIGS太陽電池が数量として多い。この他にも直径1mm程度の球状Siを用いたものや、ガリウムヒ素(GaAs)を用いたものが統計に表れている。
しかし、前年度比や四半期ごとの変化を見ると、出荷量が安定したSi単結晶、じりじりと後退するSi多結晶、出荷量の伸びが著しいが安定しないSi薄膜・その他という構図が浮かび上がってくる。Si単結晶は四半期ごとの出荷量ではわずかな上下を繰り返しているものの前年度比で123.5%に伸びている。2011年度第2四半期の出荷量は過去最大だ。
一方、Si多結晶は前年度比で77.3%に低下、四半期ごとでも第1四半期の34万3933kWから第4四半期の20万6652kWまで減り続けている。過去最大だった2010年度第2四半期と比較すると、2011年度第4四半期は出荷量が59%に落ち込んでいる。
Si薄膜・その他は前年度比こそ164.8%と高いが、第4四半期の落ち込みが著しい。第1〜第3四半期では順調に成長してきたものの、第4四半期で一気に前四半期比で3分の1に落ち込んでしまった。JPEAはSi薄膜・その他の落ち込みについて分析を加えていない。しかし、もともとSi薄膜・その他は輸出依存度が高く、第4四半期の総輸出量が第3四半期の約2分の1に落ち込んでいることを考えると、原因は輸出低迷にあると推定できる。
なお、今回の調査対象は以下の34社である。調査対象企業は第3四半期と第4四半期で変わらず、34社全てから集計に対する回答が得られている。
AGC硝子建材、Qセルズジャパン、YOCASOL、伊藤組モテック、ウエストホールディングス、カナディアン・ソーラー・ジャパン、カネカ、川崎重工業、京セラ、グリーンテック、クリーンベンチャー21、神戸製鋼所、サニックス、サンテックパワージャパン、三洋電機、シャープ、ショット日本、新興マタイ、積水化学工業、ソプレイソーラー、ソーラーフロンティア、高島、長州産業、東芝、トリナ・ソーラー・ジャパン、ネクストエナジー・アンド・リソース、ノーリツ、パナソニック電工、富士電機、フジプレアム、ホンダ、ミサワホーム、三菱重工業、三菱電機。
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