ドイツの太陽光発電、「失敗」から日本が学べること:ビジネスニュース オピニオン(1/4 ページ)
ドイツは膨大な太陽電池を導入した結果、固定価格買い取り制度(FIT)が維持できなくなり、崩壊寸前――このような意見を耳にしたことはないだろうか。このような見方は正しいのか、FIT導入目前の日本が学べることは何か、解説する。
これから太陽光発電の大量普及を図る日本が研究すべきなのはドイツだ。ドイツの事例から学べることは多い。
ドイツ国内では、太陽光発電の買い取り価格を引き下げる議論が進むなど、太陽光発電に対して距離を置き始めているように見える。しかし、ドイツが失敗したという見方は表面的だ。20年にも及ぶFIT(固定価格買取制度)の運用の結果、既にドイツの太陽光発電は莫大な電力を生み出すに至っている。太陽光発電を諦めたのではなく、わざわざFITを使って強く導入を後押ししなくてもよい段階に至ったと考えるべきである。
ドイツが失敗したのか、それとも成功を収めたのか、太陽光発電の現状から確認してみよう。太陽光発電の普及状況は国ごとに異なっており、地理的にもかなり偏っている。世界市場に導入された太陽電池のうち、欧州が4分の3を占めている。これは2011年までの累計値だ。欧州のうち約半数をドイツが占めている(図1)。
図1 住民1人当たりの太陽光発電の導入量 ドイツ南部のバイエルン州(人口1200万人、州都ミュンヘン)では1人当たりの導入量が450Wを超えている(紫色)。2011年時点のドイツ国民1人当たりの導入量は302.8Wであり、国民1人当たりでは日本の10倍以上に相当する。出典:EPIA
巨大な電力源に成長
大量に設置された太陽光発電システムは、順調に稼働しているという。ドイツは日本と比べて平均日射量が2割減(8割程度)にすぎず、必ずしも太陽光発電に適した立地ではない。それにもかかわらず、2012年5月25日には、ドイツ全国の太陽光発電システムの最大出力が一時2200万kW(22GW)に達した。再生可能エネルギーに関する調査団体であるドイツIWR(Internationales Wirtschaftsforum Regenerative Energien)の発表(ドイツ語)によれば、2200万kWに達したのは25日の正午であり、晴天に恵まれたためだとした。IWRによれば、出力量2000万kWに到達した国は、ドイツが初であり、この出力量は、原子炉20基分に相当するという。
太陽光発電は日中、それも晴天時にしか発電できないという強い批判がある。既存の電力源を代替できず、不安定で頼りにならないという批判だ。この「課題」についてドイツはどのように対応しているのだろうか。
太陽光発電の持ち味を生かすように運用しているというのが答えだ。太陽光発電は、一般に最も電力需要が高くなる日中、それも正午前後に最大出力に達する。従って、電力構成のうち、ベース供給力ではなく、ミドル供給力やピーク供給力を賄うのに適した電力源だ(図2)。
図2 日本国内の電力需要の変化 ある1日の電力需要の変化を表した模式図。常に一定の出力を保つベース供給力と、需要に合わせて出力を調整するミドル供給力、ピーク供給力を組み合わせて需要に対応していることが分かる。出典:電気事業連合会
ドイツはどのようにピーク需要を賄っているのだろうか。
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